0-material(ぜろ・まてりある)

【魔法使い】
メイジ(英語:mage)
マギ(ラテン語:magi)
マジシャン(英語:magician)
魔法使い。元はゾロアスター教の司祭・占星術師を指す。「腕が立つ者 or 力を持つ者(印欧祖語:*magh-)」が語源とされる。イエス・キリスト誕生を祝福に訪れた東方の三博士はマギ。同根語としては「機械(英語:machine)」がある。なお、ゾロアスター教徒はインドにごく少数ながら未だ存在している(タタ財閥など)。
ウィザード(英語:wizard)
魔法使い。中英語で「賢い(wys)」+「~者(-ard)」に由来。遠くは印欧祖語の「知る・目にする(*weid-)」に辿り着く。
ウォーロック(英語:warlock[男性]/古英語:wærloga)
魔法使い。古英語で反逆者・敵の意味を持つ。誓いを破る者とも。語源としては「信仰(古英語:wær)」+「嘘をつく(古英語:leogan)」。
ウィッチ(英語:witch[女性]/古英語:wicce)
魔女。語源については古英語の「予言(wigle)」とするもの、ゲルマン祖語の「降霊術(*wikkjaz)」とするもの、あるいは印欧祖語の「力強い(*weg-)」に由来を求めるものなど諸説あり。
ソーサラー(英語:sorcerer[男性])
ソーサレス(英語:sorceress[女性])
妖術使いとも。ラテン語の「運命(sortis)」に由来。更に古くは印欧祖語の「準備する(*ser-)」に辿り着く。もともとは占い系の職業か。英語の「整列(sort)」「一連(series)」も遠い語源は同じ。
アデプト(英語:adept)
魔術の達人、あるいは上位者を指す言葉として使われる場合もあるが、本来は「熟練者」の意味。ラテン語で「~に向かって(ad-)」+「適応(aptus)」。電子機器に於けるアダプター(英語:adapter)も同根。
シャーマン(英語:shaman/エヴァンキ語:šamán)
精霊使いと和訳されることもあるが、元はエヴァンキ族(北アジアのツングース諸語話者)の司祭を指す呼称。現地の言葉で「呪術医」を意味するとされる。他にプラークリット語(古代インドの民衆語)の修行僧(samaya-)に由来するという説もあるが、真偽の程は不明。
サモナー(英語:summoner)
召喚士。元々は裁判所で出頭(英語:summon)を命じていた担当者のこと。この『サモナー』という呼称はゲーム用語として広まった面が強く、英語圏では「evoker(呼び出す者)」あるいは「invoker(呼びかける者)」と表記される場合も多い。前者が(いわゆる)悪魔的存在の呼び出し(英語:Evoke)であるのに対し、後者はイタコのような呼びかけ(英語:invoke)つまり降霊・降神術を指す。
コンジュラー(英語:conjurer)
奇術士。「誓い(ラテン語:jurare)」と「共に(ラテン語:com-)」が語源。悪魔や精霊を呼び出す(evoke)タイプの術者とされる。サモナーの項も参照のこと。
ネクロマンサー(英語:necromancer)
死霊術士。「死体(古ギリシャ語:νεκρός)」+「占い(古ギリシャ語:μαντεία)」が語源。死体にかりそめの命を吹き込み、その死体のみが知る情報を得ようとしたことから。術者本人に死者の魂を招き入れる降霊術(invoke)とは異なる。サモナーの項も参照のこと。
アルケミスト(英語:alchemist)
錬金術士。Al-はアラビア語の定冠詞(英語のtheと同義)。語源についてはエジプト由来の「黒土の地(khemia)」、ギリシャ由来の「注ぐもの(khymatos)」など諸説あり。ニュートンは錬金術士。錬金術から発展したのが化学(英語:chemistry)。
【歩兵】
ウォーリア(英語:warrior)
戦士。古フランス語のノルマン方言で「交戦(werreieor)」に由来。warの本来の意味は「混乱(ゲルマン祖語:*werso)」。
ファイター(英語:fighter)
戦士。由来はそのまま「戦う(ゲルマン祖語:*fekhtanan)」。印欧祖語の「むしり取る(*pek-)」が語源か。
ソードマン(英語:swordsman)
剣士。あるいはソーズマンとも。意味はそのまま剣(英語:sword)を持つ者だが、sword自体の語源は印欧祖語の「切る(*swer-)」に由来。
ランサー(英語:lancer)
槍兵。そのまま「槍(ラテン語:lancea)を装備する者」の意。ラテン語のlanceaはもともとヒスパニア(今のスペイン地方)の軽槍のこと。
グラディエーター(ラテン語:gladiator)
剣士。「剣(ラテン語:gladius)」を持つ者。gladiusという言葉自体は「野生のアヤメ(ラテン語:gladiolus)」に由来。その形が似ていることから。
ガード(英語:guard)
ガーディアン(英語:guardian)
守衛・守護者。あるいは保つ者の意。古フランス語のノルマン方言では warder、ゲルマン祖語では *wardo-。
【騎兵】
ナイト(英語:knight)
騎士。古英語の「少年・従者(cniht)」に由来。当初は称号であったが、後にイギリスでは爵位のひとつとなる。
スクワイア(英語:squire)
見習い騎士。元の意味は「盾(ラテン語:scutum)を運ぶ者」。エスクワイア(英語:esquire)とも。
ペイジ(英語:page)
小姓。見習い騎士の更に前段階。語源は「しもべ(ラテン語:pagius)」。更に古くは古ギリシャ語の「少年(παιδίον)」か。
キャバリエ(英語:cavalry/イタリア語:cavalleria)
騎兵。フランス語の発音ではシュヴァリエ(Chevalier)。イタリア語で「馬(cavallo)に乗る者」が語源。
トルーパー(英語:trooper)
騎兵。軍隊・兵士の意味もあるが、元は古フランス語の「団結した人々・仲間(trope)」に由来。印欧祖語では「住処(*treb-)」。
エクエス(ラテン語:eques)
古代ローマの騎士。本来の意味は「馬(ラテン語:equum)」。印欧祖語の馬(*ekwo-)に由来か。
パラディン(英語:paladin)
上位の騎士。「宮殿(英語:palace/ラテン語:palatinus)」の守衛を行っていたことから。palatinusという言葉自体は、古代ローマの7つの丘のうち最古の1つmons palatinusに由来。皇帝アウグストスがここに居を構えていたため、後に宮殿の意となった。丘の名前となったpalusの元の意味は「棒で囲まれた土地」つまり「私有地」。
【弓兵・銃兵】
アーチャー(英語:archer)
あるいはボウマン(bowman)とも。「弓矢(archery)」+「使い手」で「アーチャー」。元を辿ればラテン語の「弓(arcus)」に由来する。arc=弧。転じてarcusで虹の意味も持つ。
ハンター(英語:hunter)
猟師。狩猟(英語:hunt)する者。言葉そのものの意味としては獲物を狩るための武器が近接用か遠距離用かは定義されていないが、有史以前から弓などの比較的安全な武器が用いられることが多かったため、ここでは遠距離に分類した。
ドラグーン(英語:dragoon)
竜騎兵。別にドラゴンに乗っていたから竜騎兵なわけではなく、騎兵が「ドラグーン・マスケット」と呼ばれる小銃を装備していた事による呼称である。歴史的には近世の終わり~近代の始まり頃の登場。もしも竜に乗る騎兵を指すとすれば、それは「ドラゴンライダー」と称した方が適切かと思われる。
マスケッティア(英語:musketeer)
銃士、すなわちマスケット銃(先込め式の火薬銃)を装備した兵士のこと。マスケット(英語:musket)という言葉自体は、「小さく」+「飛ぶ(ラテン語:musca)」に由来か? アメリカの南北戦争で大量生産され、のちに商人グラバー経由で幕末の日本に輸入されたのも、このマスケット銃。古くは火縄銃もこの分類に含まれる。ちなみに小説『三銃士』は英語で「The Three Musketeers」、原語のフランス語だと「Les Trois Mousquetaires」。
ガンナー(英語:gunner)
砲手、あるいは中型から大型の火器を主に扱う兵士。意味はそのまま「銃(gun)」を使う者。gunという言葉自体は印欧祖語の「命中(*gwhen-)」に由来。
ホースアーティレリー(英語:horse artillery)
騎馬砲兵。重量により移動速度が低下しがちな大砲の機動力を高めるため、複数の馬に騎乗し牽引を行う砲兵。artilleryとはラテン語で「技術・技能(articulum)」のこと。
【聖職者】
ポープ(英語:Pope)
教皇。「父(古ギリシャ語:πάπας/ラテン語:papa)」の意味。聖職に於ける最高指導者。
パトリアーク(英語:patriarch)
総大司教、または総主教とも。「族長(古ギリシャ語:πατριάρχης/ラテン語:patriarcha)」の意味。
ビショップ(英語:bishop)
司教、または主教とも。「監督・職長(古ギリシャ語:επίσκοπος/ラテン語:episcopus)」の意味。主に教区(担当地域の教会)を監督する。
カーディナル(英語:cardinal)
枢機卿。「重要な・主要な(古ギリシャ語:καρδινάλιος/ラテン語:cardinalis)」の意味。原義は「ちょうつがい(ラテン語:cardo)」。ここより上の職に就いている者のみが、教皇に選出される可能性がある。
ハイプリースト(英語:high-priest)
本来のキリスト教には存在しない階級。相応する聖職位としてはビショップを参照のこと。
プリースト(英語:priest)
司祭、または神父とも。「長老(古ギリシャ語:πρεσβύτερος/ラテン語:Presbyter)」の意味。教会などでミサを執り行う。
ディアコン(英語:deacon)
輔祭(ほさい)。「しもべ(古ギリシャ語:διάκονος/ラテン語:diaconus)」の意味。プリーストを補助する。助祭(じょさい)とも。
カテキスト(英語:catechist)
伝教師。「教えを授ける者(古ギリシャ語:κατηχητής/ラテン語:catechista)」の意味。
アコライト(英語:acolyte)
侍祭(じさい)。「お供(古ギリシャ語:ἀκόλουθος/ラテン語:acolythus)」の意味。祭壇奉仕者とも呼ばれる。堂役(英語:server)とも。
クレリック(英語:cleric)
僧侶、聖職者。「相続に適する者(古ギリシャ語:κληρικός/ラテン語:clericus)」の意味。特にその地位などを指定せず、総合的に称する場合に用いる。
モンク(英語:monk)
修道士。誓願により「ひとりで生活する(古ギリシャ語:μοναχός/ラテン語:monachus)」者の意。キリスト教用語を含め、本来は「格闘僧」的な意味は持っていない。これは恐らく少林拳の修行僧に対してこの訳語をあてたことによる誤解か。
エクソシスト(英語:exorcist)
祓魔師(ふつまし)、いわゆる悪魔払い。古ギリシャ語の「外来の or 徹底した(exo-)」+「誓い(horkos)」か。キリスト用語辞典によれば「厳命によって追い出す」の意とされる。
【その他】
セージ(英語:sage/ラテン語:sapiens)
賢人。意味は「知識を愛するもの(古ギリシャ語:σοφός)」。語源は「叡智(英語:sophia/古ギリシャ語:σοφια)」より。「賢者(英語:wise old man)」とも呼ばれる。
ヒーラー(英語:healer)
治癒を生業とするもの。ゲルマン祖語で「癒す・治す(*hailjan)」に由来する。
レンジャー(英語:ranger)
野伏とも。「うろつく(英語:Range)」人の意味。主に地域を巡回する警邏隊や警備隊員としての意味が強いが、現代では特別奇襲隊員としての意味でも用いられる。
スカウト(英語:scout)
斥候、偵察兵、あるいは見張り役。意味は「見るもの(ラテン語:speculatum)」。転じて新人発掘的な意味を持つこともある。余談ではあるが、20世紀初頭に退役軍人が少年向けに斥候訓練を行ったことがボーイスカウトのはじまり。
シーフ(英語:thief/古英語:þēof)
盗賊、泥棒。原語は「しゃがむ者(印欧祖語:*teup-)」か。義賊的な意味で用いられることもあり、場合によってはロビン・フッド(Robin Hood)もThiefに分類される。
ロバー(英語:robber)
強盗。古高ドイツ語で「略奪する者(roubon)」。ゲルマン祖語に遡れば「壊す者(*raub-)」が由来となる。
ミンストレル(英語:Minstrel)
吟遊詩人、あるいは宮廷詩人。語源は「召使い(ラテン語:ministerium)」。
【特定の地域・文化に依存するもの】
ランツクネヒト(ドイツ語:Landsknecht)
ドイツ傭兵。「槍(ドイツ語:Lanze)」の「使用人(ドイツ語:Knecht)」が由来か。対騎兵用に長槍「パイク(英語:Pike/ドイツ語:Spieß)」を主な武器とし、接近戦では片手剣「カッツバルゲル(ドイツ語:Katzbalger、猫の喧嘩katzbalgenに由来)」を用いていた。
ハスカール(古ノルド語:húskarlar/古英語:huscarl/英語:housecarl)
中世の北方ゲルマン人(ノルド人)出身の傭兵。語源は「家の人」。領主ないしは王に忠誠を誓う騎士とは異なり、そのほとんどが私兵として活動していたため、戦史の上ではあまり華やかな記録を残していない。
イェーガー(ドイツ語:Jäger)
猟兵とも。元はそのまま「猟師」の意。北ヨーロッパ発祥の民間兵であり、生業とする狩猟の延長上にある遠距離狙撃を専らの分野とした。
ミニットマン(英語:minuteman)
アメリカ独立戦争に於ける植民地民兵。ほんの1分(minute)の招集で駆けつけるため。平時は市民であり、職業軍人のような近接格闘訓練を受けてはいるわけではないため、狙撃を専門に担当した。「イェーガー」も参照のこと。
コサック(ウクライナ語:козаки/英語:cossack)
ウクライナ地方出身の民族騎兵。現地の言葉(テュルク語系の言語)で「自由人」の意味。その指揮官は「ヘーチマン(Hetman:首領)」と呼ばれる。いわゆるコサックダンスが有名。
バーサーカー(古ノルド語:berserkr/英語:berserker)
「熊(古英語:ber)」の「上着(古英語:serkr)」を身に纏った狂戦士。古くは北欧神話に登場する。アイスランドの歴史書には10世紀頃に存在した旨の伝聞について記述があるが、真偽の程は不明。
バーバリアン(古ギリシャ語:βάρβαρος/英語:barbarian)
古ギリシャ語の「バルバロイ(ベルベル人)」に由来。ギリシャ人から見て彼らの話し言葉が「ベルベルベルベル」という音に聞こえたためとされる。ベルベル人の言語はアフロ・アジア語族に属するとされ、インド・ヨーロッパ語族のギリシャ語とは異なる系統を持っているため理解が困難だったと考えられる。
アサシン(アラビア語:الحشاشون/英語:assassin)
イスラム教一派のカルト教団が擁した暗殺者(あるいはその集団)。語源は「大麻(hashish)」。これは麻薬を用いたためという伝説に依るが、歴史的真偽の程は不明。
バッカニア(英語:buccaneer)
カリブ海賊。ブラジルの原住民トゥピ族の肉料理 mukem(フランス語:boucan)を保存食として携行したことから。
コルセール(英語:corsair)
私掠船。コルセアとも。「経路・進路(ラテン語:cursus)」を語源とする。英語の「道筋(course)」は同根語。
ドルイド(古アイルランド語:druí/英語:druid)
ケルト人の司祭。「オーク樹の賢者(印欧祖語:*dru-wid-s)」の意味を持つ。元はオークの樹を霊木としていた事に由来か。
バード(英語:bard)
ケルト民族の詩歌伝承者。古ケルト語で「歌う者(bardos)」、印欧祖語では「称える(*gwer-)」に由来する。詩人、バルドとも。
トルバドール(英語:Troubadour[男性])
トロバイリッツ(英語:Trobairitz[女性])
南フランスの吟遊詩人。古オック語で「歌を考える者(trobador)」に由来。語源としてはラテン語の「歌(tropus)」の単語に辿り着く。
ミンネゼンガー(独:Minnesänger)
ドイツ語圏の吟遊詩人。「愛(中高ドイツ語:Minne)」を「歌う(中高ドイツ語:sang)」者。
ウィッカン(英語:wiccan)
現代に甦った魔女衆。「機知(古英語:Wic/英語:Wit)」に由来。古代多神教の復興運動により20世紀中頃からこの言葉が使われるようになった。

注釈
古英語
古期英語とも。中世に使われていたが、現在の英語とは発音がかなり異なる。参考:古英語による主の祈り
中高ドイツ語
11世紀半ばから13世紀半ば頃までの高地ドイツ(中部から南部)で用いられた言葉。それより古い言葉は古高ドイツ語と呼ばれる。ちなみに北方の言葉は低地ドイツ語。
古ノルド語
北方人、つまり現在のデンマーク・スウェーデン・ノルウェーを中心とした地域で使われていた言葉。その話者であるヴァイキングの進出圏に於いても用いられていた。この言語の書き言葉(厳密には刻み言葉)がルーン文字。
ラテン語
古代ローマ帝国を中心とした地域で用いられていた言葉。文字の形状(つまりアルファベット)のみならず、単語の多くがその後のヨーロッパの各言語に大きな影響を与えた。
ゲルマン祖語
古ノルド語よりも更に古く、ゲルマン民族の遠い祖先が用いていたとされる言葉。まだ文字が生まれていない時代の話であり、当時の発音は比較言語学による分析に頼るしかなく、そこから復元・再構築された単語には区別のため冒頭にアスタリスクが付与される。例:*werso(混乱)
印欧祖語
インド・ヨーロッパ語族の共通の祖先が用いていたとされる言葉。まだ一つの地域に居た頃、つまり紀元前4000年頃まで用いられていたと考えられている。ゲルマン祖語同様に、比較言語学の研究により復元・再構築された単語には区別のため冒頭にアスタリスクが付与される。