『花束を彼女(の為)に(探しに行ったアークライトが遭難した苦難と困難の7日間の全て)』
1日目 シルバニア王国 王都シルバニア 「白亜の王都、シルバニア」 夜、町の街灯に灯される魔導の明かりが白き町に映えるその光景は、訪れた旅人達を魅了してやまないという。 実際、それがきっかけでこの町に移り住んだ者達も沢山いる。 「白亜の王都、シルバニア」 この町の人々は自分たちの住む此の町のことをそう呼んでいるが、他の都市の人々からはこう呼ばれている。 「幻惑の都、シルバニア」と。 |
「あらぁ、レナードちゃん☆」
「ん?
誰かと思えばアークにユリアか。
……どうしたユリア、そんなに目を輝かせて?」
「ねぇねぇ、レナードちゃん、聞いて聞いて。
さっきね、男女のカップルが公園で逢い引きしてたんだけど、
それが面白いの。何が面白いってね……。」
五分経過。
「……ですって。
後ろから抱きしめて耳元で『君は僕の可愛い恋人だよ』ですって☆
きゃあ☆もう、破廉恥ねぇ☆」
「あの男性より女性の方がかなり年下でしたねぇ。」
「……アーク、あたしがアークより年上なのはダメ?」
「いえ。
別にそういうわけじゃないですよ。
……ジュリアさん?」
「どうせあたしはアークより2つも年上よ。……くすん。」
「別に他意はないですよ。
ジュリアさん、
僕は貴方が年上でも一向に構いませんよ。」
「……そうよね。
アークってば今まで一度も私に花とかくれたことないものね。
くすん。」
「じゃあ今度ジュリアさんの好きな花をあげますから。」
「今度じゃだめっ!いますぐ取ってきてっ!
エーデルワイスの花じゃなきゃダメよっ!
……くすん。」
(また始まったか……ユリアの無理難題押しつけが。
大体エーデルワイスの花など、この辺りには咲いていないぞ。
北方の山岳地帯に咲いているという話は聞いたことあるが……。)
「お、おい、アークライト!?そっちは窓だ……いや、そうじゃない。
まさかお前、今から北方に行く気か!?仕事はどうするんだっ!?
おいっ!だからそっちは窓だと言っているだろうがっ!」