『花束を彼女(の為)に(探しに行ったアークライトが遭難した苦難と困難の7日間の全て)』
2日目 シルバニア王国 港町バレンタイン シルバニア王国で最も大きい港、バレンタイン港。 この国の最大の漁港にして最大の貿易港でもある。 遥か昔、ラファエル王国という国が大陸全土を支配していた時代にこの名がつけられたという。 2月14日に正式に町として認められたことから、その日を表す「バレンタイン」という名が付けられたという話だ。 もっとも、この大陸の住人はその日が本当は何の日であるのか、「バレンタイン」とはどの様な意味であるのかを知らないが。 |
「馬車で来ても3日ぐらいかかる場所のはずなんだけどなぁ。
…………まぁいいや。
いつものことだし。」
「……アークライト師団長?」
「おや。君は。こんな所で会うなんて奇遇だねぇ。」
「それはこっちの台詞ですよ。
一体どうしたんですか?
こんなところに?」
「さぁ。それが僕にもさっぱり。」
「……ひょっとしてアークライト師団長、
まさか、まさかとは思いますが……。
道に迷ってこんなところまで来たんですか?」
「うん。どうやらそうみたいなんだ。」
「……はぁ。私もどうせ今から王都に帰るところですから、
なんでしたら一緒に帰りましょうか?
それなら迷う心配はないと思いますよ。」
「うん。せっかくだけど行くところがあるんだ。」
「え?」
「エーデルワイスを手に入れなくちゃいけないんだ。
じゃ、そういうわけで。
またね。」
「…………え?エーデルワイス?
ってアークライト師団長!?どこに行かれるんですか!?
そっちは海ですよっ!ちょっとぉ!聞いてます!?」