『花束を彼女(の為)に(探しに行ったアークライトが遭難した苦難と困難の7日間の全て)』
6日目 ケチュア自治領 山岳地帯 大陸北方、地図の果て。 通常は大陸の北方と呼ばれるが、実際に大陸の北方に存在しているわけではない。 エルメキア礼法国にただ一つ残されている古代世界の地図によれば、このケチュアの地とて大陸の半ばにまで及ばないという。 かつて、真偽を確かめようと旅に出た一人の男性がいた。彼はこのケチュアの地の北方に横たわる白き砂漠に足を踏み入れ、そしてそのまま帰ってこなかったという。 砂漠の向こうに何があるのか、未だに誰も真実を知らない。 |
「うん。
おじいさん、ちょっと聞きたいことが有るんだけどさ。
エーデルワイスってどこにあるの?」
「エーデルワイスの花か?ああ、すぐそこに咲いているではないか。」
「この白い花がエーデルワイスですか。」
「そうじゃよ、若いの。
もともとこの辺りには原生していなかったのじゃがな、
なんでも千年以上の昔、別の大陸より……」
「一輪貰っていい?」
「人の話は最後まで聞くものじゃよ、若いの。
ん?何?一輪欲しい?
……まぁそのぐらいならば問題なかろう。」
「うん。ありがとう。」
「……ところで若いの、儂に似とるな。」
「うん。僕も丁度そう思っていたんだ。」
「若いの、名は何という?」
「ケイン。ケイン=アークライト。」
「アークライト!
ということはもしかしてお主の祖父の名は……。
ラルフではないか?」
「あれ?なんで知ってるの?」
「……ラルフは儂の兄じゃよ。
若い頃、家を飛び出したきりだったのじゃが……。
まさか兄の孫にこんな場所で出会えるとは思いもせんかったのぉ。」
「うん。僕も。なんか似ていると思ったんだ。
ところでおじいさん。
こんな山の上で何やってたんですか?」
「うむ。道に迷っておったのじゃよ。」