『僕は、語らない』
「……メンデル隊長。どうして、こんなことを……?」
「理由は簡単だよ。自分の知識欲を満たすためだ。」
「何を知りたいんです、隊長は?」
「もはや語られていないラファエル王国以前の歴史だ。」
「ちょっと待てよ。
歴史が知りたければその知識のある場所に行けばいいことじゃねぇのか?
セリフォス島にあるアシスト総合図書館なりなんなりに……。」
「確かに文献で歴史を調べるのも一つの手かもしれない。
だがそれが真実であると誰が証明する?
実際に誰も見ていないのに?」
「じゃあ、それを見るためにメンデル隊長は……?」
「そうだ。一般人のみならず軍人といえども検問所を越えることは出来ない。
ましてそれを無視して突破できるほど私は強くもない。
だから調査隊の許可証が必要だった。」
「……隊長は……その為に、軍に入ったのか?」
「そうだ。
ただこの機会のためだけに。
……長かった。」
「それほどまでにして、隊長は何を求めるというのです?」
「世界の真実だ。
この世界の真の姿を、
私は知りたい。」
「世界の、真の姿……?」
「何故我々人間が今ここにいるのか。そう考えたことはないか?」
「え?何故って……。
あっ!
光が……前方から……。」
「出口か?」
「……見えてきたな。あれが世界の真実だ。」