Forbidden Palace Library #00 「失われた7枚」シリーズ 外伝

『祖父を訪ねて三千里』




2日目

ヴァンドレディ公国

ヴァンドレディ、あるいはヴァンドルディと呼ばれる小さな公国。
もともとはどこか別の大陸の言語方言で「金曜日」を意味するらしい。

しばらく前までは国家継承権を巡り議会側と公爵家側が争っていたが、
隣国シルバニアの調停により、現在は公爵家側の遠い跡取りが暫定的に国を治めている。
もっともそれは5年という条件つきではあるが……。

アーク 「うん、シルバニアからセントラル港に行くのに、
 ちょっと道を間違えてしまった気がするなぁ。
 誰かに聞いてみよう。」


てくてくてく


アーク 「ちょっといいかい?」

ヴァイン 「……うっとり。」

アーク 「???」

ヴァイン 「ああ、失礼。酒瓶にうっとりしていたもので。」

アーク 「うん、酒瓶?」

ヴァイン 「そうだ、これだこれ。見てくれ。うっとり。
 エルメキア産のシャイルワイン607年生産の逸品だ。
 ああこの表面のなめらかさ、そしてコルクの肌触り。」

アーク 「???」

ヴァイン 「うっとり。
 …………ああ、また失礼。
 ところで何かお困りのようですが?」

アーク 「うん。実は道に迷っちゃって。」

ヴァイン 「そうですか。
 実は私もワインの瓶を一つなくして困っていたところなんです。
 公爵様の所に持っていこうと思っていたんですが……。」

アーク 「うん、ワインはまた買えばいいんじゃないの?」

ヴァイン 「間違えないで下さい。
 私が興味あるのはワインの瓶であって、
 その中身はどうでもいいんです。」

アーク 「じゃあ中身はどうしているの?」

ヴァイン 「捨ててる。いらないし。」

アーク 「……うん、なんとなく間違っている気がするけどまぁいいや。
 ところでちょっと聞きたいんだけど、
 セントラル港に行くにはどう行けばいいんだい?」

ヴァイン 「このままとりあえず南に向かって、
 次の街道分岐路を西に。すると大きな街道にでるから、
 そこから南にまっすぐ向かえばいい。」

アーク 「うん、ありがとう。」

ヴァイン 「いやいや。では私はお城に急ぐので。ああうっとり。」


すたすたすた


アーク 「えっと、この道を南に行って………………。
 それからどうするんだっけ?
 うん、とりあえず行けるところまで南に進んでみようっと。」


▽ ……。



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