『祖父を訪ねて三千里』
3日目 ナヴァリニア共和国 首都ナヴァリノ 謎の多い憲法を持つナヴァリニア共和国。 誰一人として理解する人間のいないペンギン語を何故か公用語の一つとして憲法で定めている。 それ以外にも、海の果てにあるとされている氷の大陸「ユル・シアルス」の領土権を主張しているのも大陸で唯一この国家だけである。 だが公式には誰一人としてその大陸には居住していない為、事実上は無意味なのだが。 謎の多い憲法を持つナヴァリニア共和国。 その為か、この国では法律学者になりたがる者が後を絶たないと言う。 |
「また道に迷っちゃった……お腹も空いたし。
あ、おいしそうな果物売ってる。
……おやつ代わりに買おうかなっ、うん」
「あー、そこの鎧を着た髪の毛ぼさぼさの。」
「僕?」
「そう、貴公だ。どうやら貴公はこの国の人間ではないみたいだな。」
「うん、そうだけど……君は?」
「リュミエール=ヴィオ。この国で弁護士をつとめている。」
「うん、それで何の用だい?」
「いやいや。
貴公がおやつを買うだの買わないだの耳にしたので、
法律違反を起こさないように注意をしておこうと思ってな。」
「法律違反?」
「よいか、貴公。
この国ではおやつは一回500円……ああ、いや、10リルまでと、
法律で定められている。」
「法律で?」
「そうだ、法律だ。」
「果物も?」
「バナナだけはおやつと見なされない。」
「そうだったのか。」
「法律でそう定められている。
万が一遭難して食べ物がバナナしかなくなってしまったのに
おやつが500円……10リル分までという制限があっては困るだろう?」
「うん、もっともだ。」
「そうか、貴公も納得してくれるか。
他の観光客にそう説明しても理解してくれる人が少なくてね。
いやいや実にありがたい。」
「うん、それほどでも。」
「用件はそれだけだ。
……さてと、
仕事に戻らなくてはな。」
「うん、仕事?」
「これからシルバニア行きの馬車の積荷検査を依頼されていてな。」
えーと、何々?積み荷はナヴァリニア産の布?
ちゃんと法律通りに一回のおやつは10リルまでにしてあるかな?」