『祖父を訪ねて三千里』
4日目 フェーゴ共和国 氷都シェザ 旧名により「ウシュアイア」と呼ばれることもある大陸最南の港、氷都シェザ。 『氷都』の如く冬は氷に閉ざされ、夜空にはオーロラが煌めくという。 かつて、セルシウス家のローラという名の少女が生まれ育った地でもあり、 その300年後、同じくセルシウス家のレナードという名の少年が生まれ育った街でもある。 |
「あの子は今頃どうしているかねぇ……ふぅ。」
「うん。どうしたんだい、おばさん。」
「いやね、あたしの息子が親戚の家に養子に行ってから、
もう長いことずっと会っていなくてね。
今頃どうしているかなぁと思っていたんだよ。」
「うん、きっと元気だよ。」
「手紙にはいつもそう書いてくるんだけどねぇ。
あの子は……レナードは次男なのに、あたしに似て
ちょっと神経質すぎるところがあるから心配でねぇ。」
「息子さんレナードって名前なんだ。
……ん?どっかで聞いた名前だなぁ。
ま、たぶん気のせいだよね、うん。」
「なんでもこのあいだ将軍になったみたいだけど、
まだ若いのにそんな地位が務まるのかあたし不安でねぇ。
それにあの子で本当に大丈夫なのかねぇ。」
「どこかで聞いた話のような気もするけど、きっと大丈夫だよ。」
「ありがとさん。
そう言ってくれると気休めでも少しは安心できるよ。
いい部下に恵まれているといいんだけどねぇ。」
「うん、そうだといいねぇ。」
「ところであんた旅の人かい?
見たところこの街の人じゃないね。
この街には観光に来たのかい?」
「ううん、セントラル港に行こうと思って道に迷っちゃって。」
「セントラル港かい? あきれた子だね、方向が全然ちがうよ。
いいかい、この街を出てずーっと海岸沿いに進むんだよ?
そうすればそのうちにつくはずだから。」
「うん、海岸沿いね。それじゃあ。」
「ちょっとあんた、道違うよ、
そっちの海岸沿いじゃなくてこっちの海岸だよ!
こっち、こっちだよ!」