『祖父を訪ねて三千里』
6日目 セレリア公国 首都セントラル シルバニアから分水界を隔てた山々の向こうにある国家、セレリア。 開拓時代に建国された国家の一つ。 交易に於いてはヴェール地方とフェーゴ地方、そしてシルバニア地方を結ぶ重要な拠点となっており、商人達にとってはなくてはならない都となっている。 そのためだろうか、大陸の辺境に位置する小国ながらも交通の要として多くの人々の賑わいを見せている。 |
「あ、ラルフおじいさんみっけ。」
「おお、孫のケインか。」
「うん。おじいさん元気?」
「わざわざすまんの、こんなところまで来て貰って。
なんでも身内が来んと釈放してくれんのじゃと。
堅苦しい世の中じゃわい。おちおち散歩もできん。」
「うん、ところでどうしてこんな所にいるんだい?」
「それがわしにもさっぱり。
家に帰ろうとしてしばらく歩いていたのじゃが、
気が付いたらこの街の中におってな。」
「衛兵に家はどこかと聞かれてシルバニアと答えたら、
パスポート持っているかと聞かれて持っていないと答えたら
そのままこの留置所に入れられての。」
「うん、そうだったのか。」
「じゃが今回の迷子でわしの若い頃を思いだしたわい。
ある日、散歩のつもりで家を出たはずが、
気が付くとシルバニアにおったことがあっての。」
「うん、それで?」
「なんとかケチュアまで帰ろうと思ったんじゃが、
どうにもこうにも道がわからなくての。
ほれ、ケチュア地方は一般の地図に載っておらんじゃろ?」
「そういえばそうだった気もする。」
「まぁそれで仕方なく今のシルバニアに居着いたんじゃが、
今でも時々景色を思い出して懐かしくなるわい。
谷間の街から見える、山脈に連なるたくさんの風車を……。」
「うーん、
どこか一面にエーデルワイスが咲いていたのは憶えているけど、
風車のある所までは行かなかったなぁ。」
「……まぁその話はあと回しじゃ。
そろそろ帰らんかのぉ?
わしゃもうここ飽きたわい。」
「うん、じゃあ帰ろうか。」