『鐘の音を合図に』
「ハーシェルとセルシウスです。」
「入れ。」
「ウェルナー将軍……」
「事情は部下の者から聞いた。」
「…………。」
「自分達のしたこと、ちゃんとわかっているんだろうな?」
「はい。」
「承知の上です。」
「ということは二人とも覚悟は出来ているということだな?」
「はい。」
「出来ております。」
「……始末書を明日までに各々30枚。以上だ。」
「え?」
「ウェルナー将軍……?あの、国家内乱罪の適用は……」
「……お前達は一刻も早い人命救助のために規則違反を承知で行動を起こしたのだろう?
時には、そういうこともある。
いや、むしろ人を救うためにそういう勇気を持つ者が部下にいて私としては嬉しいよ。」
「……将軍……。」
「王には私から言っておく。
それにハーシェル、廊下でベークランドがお前のことを待っているだろ。
……始末書は明日の朝一で提出しろよ。それだけだ。帰ってよし。」
「……ウェルナー将軍、一つお伺いしたいことが」
「なんだ?」
「王城3階の隠し部屋というのは……」
「私もよくは知らない。
かつての250年前の大戦の時に閉じられたままだという話だ。
何が封じられているのか私も知らない。もしかすると、王すらも。」
「陛下すらも?」
「250年前に一度開けられたきり、ずっと閉じられたままらしいからな。
……なんでもウィリアム=アシストとかいう魔導師が中に何かを隠したらしい。
私が知っているのはそれだけだ。」
「エンディル……肌青き民……。」
「ともかく、始末書を30枚。忘れるなよ。
これで話は終わりだ。
……ベークランド、扉に耳なんか当てていないで入って良いぞ。」
「はーい。失礼、しまーす。」
「どうせお前のことだから廊下の外で聞いていたんだろうが、そういうことだ。
……私はこれから用事があるので後はまかせる。
最後に出る者が鍵をかけて退室しろよ。」
「……恩に着るぜ、ウェルナー将軍。」
「ああ、まったくだ。」
「……セルシウスさん、ハーシェルさん、本当にありがとうございました。」
「例には及ばないさ。
救出に行くって言い出したのはこいつだしよ。
……ま、あとはがんばれよ、ボイス。」
「おい、レオン!」
「じゃあな。先に兵舎に戻っているぜ。」
「……ったく。」