『鐘の音を響かせ』
「くっ!」
「遅いっ!!!」
「ぐっ!!」
「流石は銀狼の剣――冴えが違うな。
いや、銀狼だけの剣ではない。
それ以前にも別の所有者はいた。」
「!?」
「この剣は歴史の狭間に幾度と無く登場する。
今となっては真の名前こそ忘れられてしまったが、
『レインエッジ』とは別の銘があったという。」
「!」
「本当なら600年前に葬り去られたはずのこの剣が、
何故未だ残っているのか。
俺も最初この屋敷で見つけたときは自分の目を疑ったよ。」
「――――。」
「ソース・オブ・ナレッジ。
我々原始魔導協会と祖を同じくし、時代によっては
我らと同一の組織たりえた探求の同志。」
「!」
「彼らはこの剣の存在を遙か北方で見つけだし、
今は無きアルゲンタインという帝国の力を利用することで
埋もれた遺産をこの大地へと取り戻した。」
「……。」
「恐らく、かの宰相も薄々気づいてはいると思うがな。
何らかの対策は練っているだろうが、
見付かりさえしなければ後は使い放題だ。」
「かの宰相、だと?」
「紫の貴公子とでも言った方がいいかもしれんな。
時には自らを駒として、歴史に介入する。
世界でただ一人、世界そのものを敵に回せる男。」
「――一体、誰のことを?」
「あの男の存在など、所詮お前ごときが知る必要もない。」
「午後6時の鐘か……お喋りが過ぎたな。
この鐘の音を、お前への弔いにしてやろう。
今すぐにここで死ぬがいい――つぁぁぁぁっ!」
「そうは、いくかぁああああっ!!!」