『エリーゼの為に』
ブランドブレイ王国 ステラ港 「星港」 遙古代異大陸語でその意味を有するこの港の歴史は古い。 一説には、ラファエル王国以前にまで……つまり1000年以上昔の旧文明時代まで歴史をさかのぼれるという噂もある。 だがそれを裏付ける証拠が何もない以上、その真偽は未だ明らかにされていないが……。 大陸のほぼ中央に位置し、交通の要となっているこの都市には大勢の人々が住んでいる。 それ故に、大陸で最も物価の高い都市としても名を馳せている。 |
「……失礼、もしかして貴殿はシルバニア王国のアシスト師団長では?」
「あ、ああ。……えっと……?」
「お初にお目にかかります。
エルメキア礼法国法兵院法都警護署監査室長のシモン=エーデルワイス。
貴殿の噂は聞き及んでおりまして、かねてより一度お会いしてみたいと……」
「ああ、どうも。」
「ところで横の美しい貴婦人は恋人でいらっしゃいますか?」
「い、いや……」
「シルバニア王国第6軍師団長エリーゼ=ラントシュタイナーです。」
「初めまして。以後お見知り置きを。
おっと、そろそろ式典が始まるようなのでこれにて失礼させて頂きます。
ではまた後ほど。」
「あ、ああ。」
「シモン=エーデルワイス……ねぇ。」
「……ロウクス君。」
「何だ?」
「どうしてさっき
『恋人でいらっしゃいますか?』って聞かれたときに
『い、いや』って答えたのよ?」
「なんでって……いや、思わずとっさに……」
「あ、そう。」
「……おい、なに不機嫌になってんだよ。」
「別に。あ、式典始まるわよ。先に行ってるわ。」
「あ、おい、まてよ、エリーゼ!」