『エリーゼの為に』

ブランドブレイ王国 街道 大陸を縦横無尽にいくつもの街道が通っている。 その中の一つ、「メーヴェルヴァーゲン街道」 シルバニア建国当初、人々が移住のために何百台もの家具運搬車と共にここを通って行くのを見たある旅人がこう名付けたという。 大陸で日常話されている言語と比べると風変わりな発音な為、それを横で聞いていたある移住者がその意を訪ねたという。するとその旅人はこう答えた「私の生まれ故郷の言葉で家具運搬車という意味だ」と。 その旅人の用いた言語がどこで使われているのか分からないというミステリアスな逸話と共に、次第にこの街道の名が広まっていったという。

「……ん……」

「エリーゼ、気がついたか？」

「え？……私……気絶していたの？」

「ああ。馬車がぶつかった衝撃で樽に頭をぶつけてな。
　あ、おい、
　急に起きると目眩起こすかもしれねぇからもう少し横になってろ」

「う、うん……」

「あ、エリーゼ師団長、気づかれました？……幌の中に入りますよー」

「アシスト師団長、ずっと横に付き添っていたんですよ。
　私が夜食食べませんかって言っても断っちゃって。
　『エリーゼが目覚めたら食うから先に食ってろ』なんて言っちゃって」

「ば、馬鹿っ！余計な事言うなっ！お前は向こうで修理を続けてろっ！」

「あ、はいっ！」

「……そうなの、ロウクス君？」

「わ、悪ぃかよ？」

「……ううん。くすっ」

「エ、エリーゼっ！何笑ってるんだよっ！」

「心配、してくれたんだ。」

「あ、当たり前だろ……恋人なんだから……」

「……その一言が、ずっと聞きたかったの。
　…………。
　ロウクス君。」

「何だ？」

「好きよ。」

「……エリーゼ……やっと言ってくれたな……」

「な、何よ……。
　そんなにまじまじと私の顔見ないでよね……。
　恥ずかしかったんだからね、今の台詞っ！」

「……エリーゼ……目、つむって……」

「え？」

「…………」

「…………んっ」

「………………」

「……もぅ……強引なんだから……」

「俺は今までずっと、敵討ちの為だけに生きてきた。
　でも、これからは……
　エリーゼ、君の為だけに生きていきたい……」

「ロウクス……」

「エリー……もう一度……」

「んっ……」

「あ、そうそう、師団長、馬車の修理終わりましたー。」

（ち、ちょっと……こっち来るわよ？）

（……それがどうした？）

（み、みつかったらどうするのよっ！？）

「師団長？いないんですか？」

（みつかったらそれはその時だ）

（よくないわよっ！
　ち、ちょっと、だから……
　だ、だめだってば！離れてっ！）

「入りますよー」

「け、蹴りぃぃぃぃぃっ！」

「いてててててて」

「馬車の修理無事に完了しましたー。
　……ってアシスト師団長、
　直したばかりなんですから馬車壊さないで下さいよぉ」

「……んもぅ。」

「どうしたんです？顔真っ赤ですよ、エリーゼ師団長？」

「い、いえ、なんでもないわ」

「そうですか。じゃあ失礼致します。」

「……やっと出ていったな。…エリー」

「な、何よ？」

「続き。」

「え、えっ？」

「もう一度、お前とキス……」

「……ん……」

「アシスト師団長にエリーゼ師団長ー。
　お腹すいたでしょ、夕食お持ちしましたよー。
　入りますね。」

「け、蹴りぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ！」