Forbidden Palace Library #00 「失われた7枚」シリーズ 外伝

『失われた7枚』if 〜昔話編 その3〜



・大陸歴641年編


……せっかく出番があると思ったのに。

レナード 「あきらめろ。」


しくしくしく。
…………。
昔々、あるところにシンデレラという女の子がいました。

アリス (ああ、王子様……。
 どうして貴方はそんなに格好いいのかしら?
 でも、私みたいな妄想癖の子とは不釣り合いよね……。)

ユリア 「あれー?アリスちゃ……じゃなくてシンデレラ?
 どこに居るのー……あ、いた☆
 ……またこんなところでぼーっとしてる。」

エリーゼ 「シンデレラ、そんなところにいたら風邪引くわよ。」

アリス (ううん、それ以前に身分の差があるわ。
 あの方はこの国の王子。そして私はただの一般市民。
 でも……この想い、どうしてもかき消すことが出来ないのっ!)

ユリア 「ちょっとー、シンデレラー?聞いてるー?」

エリーゼ 「せっかくお城から舞踏会の招待状が来たのに……仕方ないわね。
 手紙を置いていきましょ。
 そうすればあとから来ると思うわ。」

ユリア 「そーねー☆
 でもこの子ってよくぼーっとするわよねぇ。
 いつも何を考えているのかしらぁ?」

アリス (でも、でも、それでも私は貴方の事が……
 『シンデレラ、実は俺もずっと君の事を見ていたんだ。』
 『えっ!?』『身分なんか関係ない。俺と結婚してくれないか?』)

ユリア 「……エリーゼちゃん、シンデレラのドレスはどうしよっか?」

エリーゼ 「用意しておいてあげましょう。
 きっとこの子のことだから、気がついた頃には夕方になってるでしょうし。
 それに馬車も呼んでおいてあげましょう。そうすれば間に合うと思うわ。」

アリス (『でも……私なんか……不釣り合いです。王子様にはもっと素敵な人が……』
 『俺が君の事を気に入ったんだ。それ以上の理由が必要かい?』『……えっ?』
 『さぁ、愛の口づけを……』『あ…………』)

ユリア 「そうねー☆
 じゃあ、シンデレラ、
 先に行ってるわよー☆」


ばたん。

アリス 「……はっ!
 そういえばお姉さま方、私をお呼びになりました?」
(あ、あら?手紙?……え?お城で舞踏会!?)


……しーん……。


アリス (さては私を置いて行ったのね……負けないわ。でも負けないわっ!
 あ!こんなところにドレスが。
 ああ、きっと親切な魔法使いさんが置いていってくれたのねっ!)


違うんですけど……。

アリス (ああ、馬車まで用意して下さって……ありがとう、魔法使いさんっ!)


だから違うんですけど……。

ベル 「なぁ、なんで俺が馬の役なんだ?」

コペルニクス 「俺様が御者か。ちゃきーん。」


………………。

アリス 「ああ、御者さん、お城までお願いできるかしら?」

コペルニクス 「イェッサー!ちゃきーん!」


……だからどうして高枝切りバサミが……。

コペルニクス 「…………。」


いや、あの、睨まれても……。




場面は変わってお城。

エリーゼ 「ユリアお姉さま、」

ユリア 「あら、エリーゼちゃん、なぁに?」

エリーゼ 「肩まで出して大胆……。」

ユリア 「えへへぇ☆どお、色っぽいでしょぉ?
 そういうエリーゼちゃんだって似合ってるわよぉ☆
 あ、珍しくちょっとお化粧してるー☆」

エリーゼ 「い、いいじゃない、たまには私だっておしゃれしたいもの……。」

ユリア 「ひょっとしてお目当てはあの人でしょ?ねぇねえ、どうなのよー?」

アシスト 「……何かお呼びですか?」

ユリア 「あのねー、エリーゼちゃんが一緒に踊って欲しいって☆」

エリーゼ 「わ、私はそんなこと……」

アシスト 「光栄ですな。……さ、お手をどうぞ、見目麗しきお嬢さん。」

ユリア 「きゃー、見目麗しきだってぇ☆
 きゃあきゃあきゃあ☆
 かっこいー☆ひゅーひゅー☆」

エリーゼ (……ロウクス君?)

アシスト (なんだよ?)

エリーゼ (どうしちゃったの?そんな台詞、恥ずかしくない?)

アシスト (う、うるせぇなぁ!俺だって我慢してるんだよっ!)

ユリア 「いーなー。
 あったっしっのアークは……来てるわけないわねぇ。
 仕方ないからワインでも飲んで待ってよっと☆」


そして数刻後。

レナード 「諸君、今宵は集まっていただきどうもありがとう。心より礼を言う。」

アシスト 「……お前、誰?」

ユリア 「レナードちゃん、なんか別人ねー☆」

アリス (きゅんっ……)

レナード 「……君は……」

アリス 「……シンデレラ、です……」

レナード 「シンデレラ、よければ……私と踊ってはいただけませんか?」

アリス 「あ、はい、喜んで……」


そして楽しい時は流れ、夜中の12時。

アリス (ああっ!12時になってしまうっ!魔法が解けてしまうわっ!)


いえ、別にもとから魔法なんかかかっていないと思うんですけど。

アリス 「ごめんなさい、私、もう帰らなくてはいけないんですっ!」


あのー、人の話聞いてます?

レナード 「どうした、シンデレラ?何か急ぐことでも?」

ユリア 「どうしたの、シンデレラー?」

エリーゼ 「……何かあったのかしら?」

アリス 「理由は言えません。ごめんなさいっ!」

レナード 「待ってくれっ、シンデレラ!」

アリス 「あ……ガラスの靴がっ!」
(でも……魔法が解けてしまうっ!
 取りに行っている暇はないわ……)


いえ、ですからどこにも魔法なんかかかっていないんですけど……

レナード 「シンデレラっ!」

アリス 「…………さようならっ。」


ばたんっ。

レナード 「シンデレラっ!戻ってきたまえっ!」


がちゃっ!

レナード 「!?」

アークライト 「あ、ここだここだ。やっとついた。
 ……うん、どうしてみんな僕の方を見ているんだろう?
 僕の顔に何かついてるかい?」

アシスト 「こういうのはタイミングいいっていうのか、それとも悪いっていうのか?」

アークライト 「あ、ジュリアさん、待った?」

ユリア 「うん。思いっきり。」

レナード 「……一瞬でも彼女が戻ってくることを期待した俺がいけなかったのだろうか……。」




そして翌日。


アリス (はぁ……私の夢ももうおしまいね。
 王子様……貴方の瞳、貴方の唇……。
 ああ、どうして貴方は私の心を離してくれないの?)

ユリア 「あ、こっちこっち、この部屋にいるわよぉ。」


こんこん

アリス 「あ、はい?」

レナード 「失礼する。」

アリス (えっ!?ど、どうしてっ!?どうして王子さまがここにっ!?)

レナード 「このガラスの靴は貴方のも物ではないのか?」

アリス 「えっ!?」
(えっと、そうよ、昔話で読んだわ。
 ここで正直に答えないと金の靴と銀の靴が……)


話が違いますってば。
それにそれは靴じゃなくて斧です。
……そういうところ、やはり遺伝なんですね……。

レナード 「貴方を、お迎えに上がりました、シンデレラ姫。」

アリス 「えっ!?」

レナード 「私の后になってはいただけませんか?」

アリス 「……はい、喜んで……。」


こうしてシンデレラは王子様と結婚し、一生を幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。



アシスト 「……なぁ、ふと思ったんだが、」

エリーゼ 「どうしたの?ロウクス君?」

アシスト 「いや、エリーがあのガラスの靴を履いて、」

エリーゼ 「えっ……!?」

アシスト 「割れなければいいなぁと。」

エリーゼ 「蹴りぃぃぃぃぃっ!」


どごっ

アシスト 「い、痛ぇ……冗談なのに。」

エリーゼ 「あたりまえですっ!私はそんなに重くありませんっ!」

アシスト 「じゃあ抱きかかえてみてもいいか?」

エリーゼ 「えっ!?」

アシスト 「……と思ったけど腕折れたら嫌だしな。やーめた。」

エリーゼ 「蹴・りぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」



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