TITLE: 第13の機構 −歴史に消えた消失魔導−

大陸歴 599 11 15 ブランドブレイ王国
ブランディウム城
地下2階 廃棄物倉庫
大陸標準時 09:00 am

MESSAGE:
「……長官、ずっと前から気になっていたんだが。」
「気にするな。」
「……あのー、俺、まだ何も言っていないんだけど。」
「そうか、そうだったな。では手短に話したまえ。」
「この諜報部って、総員何名いるんだ?
 俺、長官以外の人物に会ったことないんだけど。」
「聞きたいか?」
「ああ。」
「……2人。それが答えだ。」
「2人っ!?」
「そうだ。私と、君と。ほら、ここに2人。」
「……ステヴィン長官。それ本気で言ってる?」
「無論本気だ。私が冗談を言うとでも思うのかね?」
(長官から出されるミッション自体がほとんど冗談みたいなものばかりなんだけど……)
「何か言ったか?」
「いや、なにも。
 っていうかもっと人員増やすなりなんなりしろよ。
 たった2人で何を諜報しろっていうのさ。」
「……人手が足りなくてな。ま、そのうちになんとかしよう。」
「そのうちっていつだよ、おい。」
「……それより早速本題に入る。
 最近、首都の至る所でが発生している事件は知っているな?」
「放電?……何、前回は水たまりで今回は雷?」
「そうだ。
 だが奇怪なことにその雷発生直後の現場を目撃した者はまだ誰もいない。
 わずかに残った放電から遠ざかるように小さな足音を聞いたという噂もあるが、
 あくまで噂に過ぎず確証はない。だが記憶に留めておく価値はあるだろう。」
「……それで、その原因を追及しろと?」
「そうだ。それが今回のミッションだ。」
「一応聞いておくけど、被害者はでているのか?」
「シュレーディンガーさん家の猫の毛が静電気で逆立ってしまったそうだ。」
「……またそーゆー被害か。
 やっぱりたいしたことないじゃん。」
「とにかく苦情がでている以上、調査せざるを得まい。」
「なぁ、なんか最近この諜報部、
 『すぐやる課』みたいな機構に変わりつつある気がするんだが……。」
「深く追求してはいかん。仕事は仕事だ。」
「はぁ。まぁいいや。
 で、いつから調査開始すればいいんだ?」
「……もちろん今からだ。」
「は?」
「その間に私はインビエルノ亭で昼飯でも食べてくるとするか。
 というわけで報告は早くても午後1時30分以降にするように。
 あとはまかせたぞ。」
「……なぁ、やっぱりずるくないか、それって?」

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