ブランディウム城 地下２階 廃品回収倉庫
大陸標準時 2:00 pm □

	「長官。」
	「なんだね？」
	「リタがここにいるのは百歩譲っていいとしよう。」
	「みゅ。」
	「うむ、今や機構の立派な一員だからな。」
	「だが、何故こいつとこの猫がここにいる。」
にゃー。
	「この部屋、随分と汚いですのね。 　シュレーディンガーの猫もちょっとほこりっぽいって 　訴えていますわ。」
	「前回の最後で『猫の手も借りたい』と言ったのはお前だろう？」
	「だからって本当に猫を連れてくるか！？」
	「安心しろ、 　グロリア嬢は猫の通訳ということになっている。 　組織の一員として選ばれたのはその猫のほうだ。」
	「いや待て、それは何か根本的に間違ってるだろう。」
	「ちなみに機構の一員よりも、通訳の方が時給は高い。」
	「……やっぱり色々と間違ってないか？」
	「リタは探偵ごっこでお小遣いが貰えれば嬉しいです！」
	「リタちゃんはいい子だな。 　それに比べて、この大人の組織員と来たら。 　少しは見習いたまえ。」
	「そういう問題じゃないだろ。」
	「とにかく本題に入ろう。 　前回、要塞跡と思われる地下遺構を探索してもらったのは 　憶えているだろう。」
	「ああ。」
	「その前回の探検結果を元に、現在の地図と照合したところ、 　他にも入り口が存在している可能性が生まれてきた。 　よって、今回はそれを調査してほしい。」
	「え、他の場所にもまだ入り口が？」
	「各通路の長さや部屋の構造からして、 　まだ他にも部屋がいくつも存在していると考えた方が、 　図面構造上、辻褄が合う。コレを見たまえ。」
	「みゅ？ 　これ前回おにーちゃんが描いた地図とは違うです。 　なんだかとっても綺麗になってるです。」
	「ああ、色々と見辛かったから私自ら描き直した。」
	「みゅー、すごく上手です。 　宝の地図みたいで、見てるだけでわくわくです！ 　リタのお絵描きの先生になってほしいです！」
	「……どうせ俺のは下手で悪かったな。」
	「ここから全体図を推測するに、 　入り口が一箇所だけとは考えにくいのだよ。 　つまり他にもまだ入り口はあると、私は思っている。 　実際、カイザリアの要塞跡も入り口は一箇所ではなかった。」
	「ふむ。」
	「歳月も経っているが、 　どこかに何かの手がかりが残っているはずだ。 　ふと気になった所や不思議な所を重点的に探してみてくれたまえ。」
	「具体的には、どの辺りを？」
	「王都全体。」
	「……俺たち三人でローラー作戦しろってことかよ。」
	「三人ではない。プラス猫一匹だ。」
	「猫の手があったところで一緒だろう。」
にゃー。
	「何なら猫の脚も貸すわよ、 　ってシュレーディンガーの猫が言っていますわ。 　でも尻尾はダメだって。」
	「いや、猫の脚借りた所でどうにもならないだろう。」
	「とにかく頑張りたまえ。 　私はその間にちょっと書類整理でもしていよう。 　ああ、忙しい忙しい。」
	「じゃあ俺がその書類整理やるから、たまには長官が外に出たらどうだ？」
	「ああ、忙しい忙しい。」
	「…………ちくしょう。」

移動先

【 沿岸貿易街 】

書庫に戻る

イベント名『オープニング』
Copyright(c)1999-2007 Fubuki Kogarashi (木枯 吹雪)