TITLE: 第13の機構 −闇夜に下る宰相命令−

大陸歴 599 11 24 ブランドブレイ王国
首都ブランドブレイ
沿岸貿易街
大陸標準時 10:00 pm

MESSAGE:
「おにーちゃん!」

たったったっ

「リタ!」
「みゅ、リタ怖かったです。
 お家にも帰れなくて、
 あれこれ聞かれて……ぐしっ。」
「もう大丈夫だ、俺がついてる。」
「みゅ。」

ぎゅっ


すたすたすた

「……申し訳ありません、宰相閣下。
 この娘に気を取られる余り、
 猫のほうはいつのまにやら行方を眩ましており……。」
「ふっ。
 所詮は猫の姿だ、そう遠くへは行けまい。
 あとでじっくり探せばいい。」
「さて、ラグランジュ家の子と
 トリチェリー家の娘よ。
 首謀者が判明した以上、貴様らに責を求める事は出来ない。」
「…………。」
「だが、知った以上、このまま見過ごす訳にはいかぬ。
 リタと言ったな、
 貴様には記憶封印の魔法を掛ける。」
「まほ……う?」
「!!!
 待て、リタに一体何をするつもりだ!
 この子に責はないと、言ったばかりだろう!」
「ふっ、その通りだ。
 しかし、地下要塞に関する記憶を把持したまま
 成長させるわけにはいかない。」
「なん……だって!?」
「情報の把持自体が危険すぎるのだ。
 ふっ、命を奪うと言っているわけではない。
 これでも最大の容赦をしているつもりだ。」
「みゅ……。」
「ラグランジュ。貴様に関する記憶も、この娘から消させて貰おう。
 ……だが魔導ではなく旧式の魔法であるが故に、
 いくつかの限界が存在する。」
「この魔法は、キーワードレベルでしか記憶は消去できない。
 そして何より、即効性のある魔法ではないということ。
 少しずつ、関連する記憶が消えていく。」
「数日もすれば、何もかも忘れる事だろう。」
「おにーちゃん……嫌です……コワイです……。」
「……その話が本当ならば、何故、俺の記憶は消さない。」
「人質のいる人材には別の使い道があるからだ。」
「……使い道?」
「ふっ。
 貴様にはこれより私の手足となって動いて貰う。
 そう、老いた大コペルニクスの代わりにな。」
「なっ……!」
「安心しろ。権力と金はいくらでも与えてやる。
 その代わり、あのエディソンとかいう男、
 奴を追いつめるその日まで、貴様に自由はないと思え。」
「……代わりにリタだけは、
 この子にだけは危害を加えないと約束してくれ。」
「ふっ。よかろう、約束しよう。
 ただし、記憶だけは消させて貰う。それでよいな?」
「…………わかった。」
「さて、小娘よ。
 記憶を消した上で家族ごと、この国から退去して貰おう。
 大コペルニクス、手続きを代行せよ。それが貴様の最後の任務だ。」
「畏まりました。」
「びくっ。
 嫌です、忘れたくなんかないですっ!
 ずっとずっと、おにーちゃんと一緒にいたいです!」
「静かにしろ!目を逸らすな!
 そう、そのまま私の目を見ていろ。
 FEERE WEEVU MAARIYYL...
「……引っ越してもずっと待ってるです!おにーちゃんのこと!」
「リタぁぁっ!」

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そして夜が明けて

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