「だがこっちには人質がいるぜ?
さっき俺がこの店の前を通りがかったとき
確かそっちの小さい方、この親父と話をしてたよなぁ?」
「あわあわあわあわ、ロ、ローラちゃん……。」
「……誰?その人?そんな人知らないもーん。」
「ほほほほほ、その通りでしてよ。」
「ひ、ひでぇ……。」
「ロ、ローラちゃん、そりゃないよ……。」
「あ。そうだ。そこの赤毛のおっちゃん☆」
「なんだ?」
「その剣って重さ何グラム?」
「……さぁ?知りたいのか?」
「うん。そこに秤があるからのっけてみてよ。」
「よし。こうか?えーと……5500…5600……」
「馬鹿野郎っ!剣から手を離してどうするっ!」
「……あ!」
「ふっ。 気づくのが遅いっ!
イ・エクトリア・レーベ
地より昇れ紅蓮の炎 プロミネンスっ!」
「プロミネンスっ!?禁呪だとっ!?」
「ぎゃあああああ!!!」
「うおぉぉぉっ!?。」
「……熱い……痛い……。」
「くっ……。」
「なんでわしまで……。」
「やったあ☆
おっちゃん強ぉい!
凄い凄いっ!」
「ふっ。それほどでも。これでもきちんと手加減を……
……いや、だから私はおっちゃんではないと。
だが感謝する。よく奴らの気を逸らしてくれたな。」
「えへへー☆」
「……セディと言ったな。
しかし炎の魔導を使ったのが仇となったな。
所詮、紙など炎の前には無力。熱で燃えてしまう……なにっ!?」
「ふっ。
この紙ならご覧の通り無事だ。
対魔導コーティングが施してあるからな。」
「た……対魔導コーティングだと?そんな話ははじめて聞いたぞ!」
「……ふっ。ならば伝承保持の褒美に少しだけ教えてやろう。
まだこの紙が一冊の本だった頃、当時のこの本の持ち主が
冊子そのものに対魔導コーティングを施したのだ。」
「ならば何故、本から数枚、いや、あるいは数十枚の紙が破れ出たというのだ?」
「虚数空間――いや、時間の奈落と言った方が分かり易いか、
その闇の炎ともいうべき裂傷により、本の大部分は消滅した。
だが本が完全に崩れ去る前に、わずかなページのみを握りしめた男がいた。それだけの話だ。」
「……もう一つ聞きたい。
何故あんたがそこまで知っている?
まるで自分がその場に居合わせたかのように……?」
「ふっ。
これ以上教えてやる義理はない。
第一、それ以上言っても貴様には分かるまい。」
「うん。
あたし全然わかんない。
せっかく手伝ったんだからもっとわかりやすく教えてよー。」
「ほほほほほ。
同意見でしてよ。
でないとわたくしの好奇心が収まりませんわ。」
「ふっ。知らん。」
「あー、せっかく手伝ったのにぃー。薄情ー。」
「お前だって魚屋の親父見捨てたくせに……。」
「あんた、一体何者なんだ?」
「ふっ。
華麗なるセディ=ラザフォード様だ。最近はそう名乗る事にしている。
ではこれは頂いていく。さらばだ。」