「おい、何者だっ!?」
「あ、おっちゃん。」
「……ふっ。そうか。せっかく助けてやろうと思ったのだが。さらばだ。」
「とても格好いいセディ様☆」
「ふっ。この私の事かな?」
「ほほほほほ、もちろんでしてよ☆
そこの美形で長身で格好良くて、紫銀色の綺麗な髪がお似合いの
ハンサムでビューティフルでブリリアントな貴方様のことですわ☆」
「オーロラおねぇちゃん、自分で言ってて意味わかってる?」
「……俺、ブリリアントって何回聞いても雅やかな気分になれないんだが……」
「ふっ。そこまで言われては仕方がない。
この大魔導師セディ=ラザフォード様が助けてやろう。
おい、貴様ら。素直に投降してその紙をこちらへよこせ。」
「!……この紙が何か、知っているのか?」
「ふっ。無論だ。
貴様らに扱えるようなシロモノではない。
今なら悪いようにはしない。さぁ、渡せ。」
「……ひとつ、尋ねよう。
お前が誰かは知らないが、一体どこでこの紙の存在を知った?
大陸の極一部の人間しか、こいつの存在は知らないはずだが。」
「ああ。
これが魔導原本と呼ばれる、俺達が普段行使する魔導の原理について
書かれた紙の一枚だということは秘密のはず……」
「大・馬・鹿・野・郎っ!だから自分から言う奴が……」
「そこに。」
「……確かに。」
「うるせぇ、うるせぇうるせぇっ!」
「うるさいのはお前だ。
ちょっと黙ってろ。
……で、あんたは一体どこでこの紙の存在を知った?」
「ふっ。貴様らよりも遥か昔から、とだけ答えておこう。
ではこちらからも質問がある。
その身なり、カイザリアの人間だな。それを一体どうするつもりだ?」
「まさか……お前も。
……お前も、この紙がもともとは1冊の本から抜け落ちた
たった1ページである事に気づいて残りのページを……」
「だ・か・ら! お前は黙ってろっ! いちいち墓穴掘るんじゃねぇっ!」
「ふっ。そこまで知っているのか。ならば特別サービスだ、教えてやろう。
本の大部分は既にこの世界には存在していない。
ある一人の男と共に消滅した。探しても無駄だ。」
「なん……だとっ!?
待て、それが仮にハッタリではないとすれば、
どうしてそんな事まで知っている?」
「……ねぇ、オーロラおねぇちゃん、何の話してるか分かる?」
「ほほほほほ、わたくしの推測によればきっとあの紙は交換日誌の一部で、
それを他人に見られるのが恥ずかしくて、
証拠隠滅をしようとしているのですわ。」
「えー?交換日記? それも男同士でー?」
「誰がするかぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「ほほほほほ、きっと図星なのですわっ。」
「……き、貴様ら……。」
「おい、いいからそいつらは無視しろ。
で。お前は一体何者だ?
見たところ、どこかの国の官吏には見えないが……。」
「ふっ。そこまで答えてやる義理はない。
……再度、警告する。
その紙を今すぐ渡せ。さすれば放免してやろう。」
「……逃げるぞっ!」
「お、おうっ!」
「あー、ちょっと待ちなさいよーっ!ほどいてから行きなさいよっ!」
「ふっ。ローラにオーロラと言ったな。
少しそこで待っていろ。
奴らを捕まえたらすぐに戻って……。」
「……格好いいセディさま☆」
「ふっ。よかろう、今すぐほどいてやろう。」