Forbidden Palace Library #J01 『真実の抹消者(前編)』

『真実の抹消者(前編)』


ブランドブレイ王国 王都
騎士団詰め所

ラグランジュ 「で、そろそろ正直に吐いたらどうだ。」

アーノルド 「いや、だから俺は何もしてねぇって!
 カイザリアの隠密兵として、
 あの女を追っていただけだ!」

ラグランジュ 「ふむ。では何故その隠密兵が、
 我がブランドブレイ王国領で主権侵害を行う?
 貴殿が外交官でない以上、特権もまた存在しない。」

アーノルド 「ジャンヌ=グリフィスは指名手配されてるんだ。
 それも最重要人物として……ん?
 なんで俺が隠密兵って知ってるんだ?」

ラグランジュ 「お前が今自分でそう言っただろ。」

アーノルド 「畜生、罠かっ!」

ラグランジュ 「……いいから白状しろよ。俺早く帰りたいんだ。」

アーノルド 「それが本音か。一体何を白状しろっていうんだ。」

ラグランジュ 「カツ丼喰うか?」

アーノルド 「カツど……なんだそれ?」

ラグランジュ 「確かハポンだかヤーパンだか、
 遠い昔に地球の反対側にあった国の
 料理の一種らしいぞ。自白剤の効果があるとか。」

アーノルド 「俺は無実だ!
 この街に来る途中のダブルブリッジ市で、
 うっかり標識倒しちまったけど黙っていればバレないはずだ!」

ラグランジュ 「罪状ひとつ追加、と。」

アーノルド 「しまったぁぁああああ!」

ラグランジュ 「……言いにくいけどお前さ、
 何も隠密兵じゃなくて、他の部署に
 配置換えしてもらったほうがいいんじゃないのか?」

アーノルド 「あんまり向いてないのは分かってる。
 だけど、これだけがジャンヌと俺を繋ぐ接点なんだ。
 放棄したらそれこそ手がかりは――。」


こんこん

名も無き騎士 「ラグランジュ騎士団長!
 今度は王城地下に侵入者が!
 さきほど目撃談のあった、赤毛で小柄な女性と同一人物と思われます!」

アーノルド 「!!!」

ラグランジュ 「王城に侵入だと?
 何故……いや、それどころではない、
 国王陛下と王子殿下は!?」

名も無き騎士 「はっ。
 現在までのところご無事です。
 七月騎士団が守備にあたっております!」

ラグランジュ 「ならば王家の守護はノーベルに任せて、
 俺は地下に向かおう。
 えーと、そういやまだ聞いてなかったな。名前は?」

アーノルド 「ベル。アーノルド=ベル。」

ラグランジュ 「わかった、ベル。ついてこい。
 カイザリアの密偵だか隠密兵だかは知らないが、
 今はお前が手がかりだ。」


▽……。



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