『真実の抹消者(前編)』
「今までずっと許されない関係だったけど、
もう終わったの。
アタイ達の、負けだったけど。」
「勝てなかったけど、悔いはないの。
全力は尽くしたんだから。
それに、やっとこれで貴方の横に居られるから。」
「……あの男は、絶望に生きろとか言ってた。
そんなことはさせない。
俺が希望になってやる。」
「……ありがとう。ねぇ、こっち向いて。」
「ん?」
「!?」
「……こんなこと言ったら、
ふしだらな女って思われるかもしれないけど。
聞いてくれる?」
「な、なんだ?」
「貴方だけじゃなくて――もうひとつ、希望が欲しいの。」
「え?」
「……アンタの子供が欲しい。」
「!? だけど、その身体じゃ――。」
「ダメ?」
「……馬鹿野郎っ。
そんなこと言われたら、断る理由がないじゃねぇか。
それに普通、こういうのは逆だろ。男と女として。」
「……じゃあ、言って。」
「な、何をだよっ。」
「アタイのこと、どう思ってるのか、ちゃんと言葉で。」
「……す、好きに決まってるだろう。」
「本当に?」
「本当に。何度も聞くな。」
「愛してる?」
「なっ……。」
「愛してないの?」
「……愛してる。世界中で誰よりも。」
「ありがとう……っ。」
「見えてきた。あの標識を越えれば、
あとは一直線でアンダルシア市だ。
二人で暮らそう。何もかも忘れて。」
「うん……。」