「極秘任務、ですか?秘書の私に?」
「うむ。
極秘も極秘、王立軍内部にすら極秘の任務だ。
まずはこの似顔絵を見てくれ。」
「はぁ……。
って、この6人……うちの、
王立軍の師団長たちじゃないですか。」
「その通りだ。
だが悲しきかな。
この中に犯人がいる。」
「犯人って……一体何の犯人ですか?」
「……聞きたいか?」
「はぁ、そりゃまぁ聞かないと任務にならないので……」
「そうかそうか、そんなに聞きたいか。よかろう。
話せば長くなるのだが、そう、あれは今から2年前の春。
先の大戦に於いて、我々がついに攻勢に転じたとき、わしは……」
(まぁた始まった……。
ボイス将軍って話し出すと長いんだよなぁ。
でも本当にこの昔話が任務に関係あるのかなぁ?)
一時間経過。
「……わしに対し槍の切っ先を向けるゼルイリアス!
もはや絶体絶命かと思われた。
だがわしは怯むことなく悠然と……」
(……この話前にも聞いたんだけどなぁ。これで5回目かな?)
更に一時間経過。
「……というわけで大戦が終結した後に、
わしはいまの将軍の地位についたのだが……。
はて? 何の話だったかの?」
(……え、何? 今の話は任務とは何の関係もなかったの?)
「そうだ!犯人だ!
信じたくはないが、この中に憎き犯人がおるのだ!
わしの……わしの……!」
「……ボイス将軍の?」
「3時のおやつに取っておいたミルククッキーを食べた犯人がぁっ!」
「…………は?今、なんと?」
「聞こえなかったかね?
この中にわしのおやつを食べた犯人が居るのだ!
というわけで君にはわしのミルククッキーを食べた犯人を捜して貰いたい。」
「犯人の推定犯行時刻は本日午前10時。
盗まれたのはミルククッキー7枚。
物的証拠は何もなく、残った8枚のクッキーにも指紋は一切なし!以上!」
「……あの、そんなことで呼んだんですか?」
「そんな事とはなんだね!
これはシルバニア王国王立軍発足以来のゆゆしき事態だぞ!
一刻も早く犯人を見つけださねばならぬっ!」
「はぁ……。
クッキーぐらいまた買ってくればそれでいいじゃないですか。
じゃあ私、執務室に戻りますので……」
「そうか。君にはクッキー道が理解できないようだな。」
(別にそんな道、理解なんかしたくないってば……)
「わかった。じゃあ君は本日付けで解雇と。」
「あ、今とってもその仕事やりたいなぁと思ってたんです。
わーい、うれしいなぁ。
わーいわーい。」
「そうか。やってくれるか。
わしはいい部下をもってうれしいぞ。
とゆーわけで早速犯人を見つけてこい!よいな!」
(はぁ……なんか大変なことになっちゃったな……。)