Forbidden Palace Library #09 君だけの騎士


王都シルバニア
住宅街
パン屋ソフトブレッド

住宅街の一角から、麦の焼ける香ばしい匂いが漂ってくる。
たった一人の少女が始めた、街角の小さなパン屋さん……ソフトブレッド。
そのふんわりとした触感が好評なのか、近所の住人にも常連客が増えているようである。

もっとも、1番の常連客はこの人だが……。




からんからん


アリス 「いらっしゃいませ……あら?」

「あー、やっぱりここにいた。」

レナード 「……何のようだね、秘書。」

「いえ、さっき散歩に行くとか言ってたので、
 もしかしたらここかなと覗いてみたんですが……
 冗談ではなく本当にアリスさんのところへ来ていたんですね。」

アリス (そんなに私に逢いたくて……?
 『君のことを想うと、夜も眠れないんだ』『あ、あの私もです……』
 『だから、君を腕の中において眠りたいんだ……』『そんな……』)

レナード 「……何か問題でも?」

「ありますっ!
 職務時間外の行動でしたら構いませんが、
 今はまだ勤務中ですっ、レナード将軍っ!」

レナード 「わかった、では私は今から自主的に休暇に入ろう。
 ……そうか。
 取り上げた有給休暇を私自身が使ってしまえばよかったのか。」

「…………しくしくしく。
 私の有給休暇……。
 ん? アリスさん、どうしたんです? 赤くなって?」

アリス 「あ、いえ、なんでもありません……。」
(あやうく妄想癖がバレるところだったわ……。
 ううん、でも負けちゃダメ。アリス、ふぁいと!)

「とにかく、ちゃんと仕事に戻ってくださいよ?レナード将軍。」

レナード 「……そのうちな。」

「そ、そのうちって…………。」



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