Forbidden Palace Library #11 本意なき発言


王都シルバニア
王城廊下



「……とは言ったものの、
 レナード将軍の行き先は把握してないしなぁ。
 私、秘書のはずなんだけど。うーん。」

ボイス 「何をうろうろしとるんじゃ、秘書。」

「あ、ボイス元帥。
 そっか、前将軍のボイス元帥に聞けばいいのか。
 あのー、すいません。」

ボイス 「うむ、どうしたね。
 どこか美味しいミルククッキーの店でも見つけたか?
 もしそうなら至急報告書の提出を……。」

「いえ、そうではなく。
 ちょっとお訊ねしたいことがありまして。
 城壁守備隊の顧問の事で。」

ボイス 「うむ?」

「例えばジェラード副師団長の場合、
 欠員による師団長代理という立場なんですが、
 それでも顧問になる資格はあるのか、と。」

ボイス 「なるほど、コペルニクスか。
 最近は普通に師団長扱いしておったが、
 言われてみれば役職はまだ副師団長だったな。」

ボイス 「確かにあやつは先日まで城壁守備隊の第一線に立っておった。
 それだけに現場を熟知していると言えるだろう。
 なにより部下を圧倒するあのカリスマは他に類を見ない。」

「……あれ、カリスマっていうんですか?
 単なる高枝切りバサミの恐怖なんじゃ。
 こう、ホラー的な、そういう……。」

ボイス 「城壁守備隊の顧問は、熟練した司令官が兼ねる事が多いが、
 軍法上はそういう明確な規則があるわけではない。
 資格という意味では充分にあるのではないかね?」

「なるほど、了解です。」

ボイス 「ところでどうしたんだね、突然そんな事?」

「あ、いえ、別に大した事じゃないんです。」

(でもあの人が出世すると、
 そのうち軍の標準装備が全て高枝切りバサミに
 置き換わってしまいそうな予感が。)

(……まさか、ね。まさかそんなことは、ね?)



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