Forbidden Palace Library / 『星降らす銀の天蓋』 /

■ メルセデス市
□ リリエンタール邸

??? 「――エーデルワイス君。キミも考えは変わらないのかね?」

エーデル 「私はリリエンタール家の執事です。
 法院についてどうこう考える立場にはありません。
 それは前に申し上げたとおりです。」

??? 「君も頑固だな。
 いいかい、エーデルワイス家と言えば名家も名家だ。
 執事などという職業に甘んじるべきではない。」

エーデル 「職業に貴賤はありませぬ。」

??? 「そうとも。今までは、な。」

エーデル 「……意味深な口調ですね。」

??? 「我が国には法という統制が必要なように、
 人間は何かに導かれなければ
 生きていけない動物なのだよ。」

エーデル 「…………。」

??? 「エーデルワイス家が法院へと戻る気があるならば、
 推薦の手配と根回しをしてやってもよい。助力しよう。
 ……父親の様になりたくなければ、よく考えることだ。」

エーデル 「!!! その話をするんじゃねぇっ!」

??? 「おっと、執事がなんという汚い言葉使いを。
 別に君を怒らせるつもりはない。
 現実的な選択肢を提示しているのだよ。」


ガチャッ


キィィィッ

セディ 「!?」


どんっ

??? 「客人か。これは失礼……――!」

セディ 「ふっ。
 なんだ、人の顔をまじまじと見つめて。
 私の顔に目や鼻でもついているか?」

??? 「いや、失礼。なんでもない。
 ではまたな、エーデルワイス君。
 よく考えておいてくれたまえ。」


すたすたすた

セディ 「ふっ。
 この私にぶつかっておいて、
 謝罪の言葉が一言だけか。足りぬぞ。」

エーデル 「……人の顔に目と鼻は必ずついていると思いますが。」

セディ 「洒落た冗談のつもりだったのだが、通じなかったようだな。
 この国の人間は皆例外なく、あのように頭が硬いのか?
 会話に潤いもなにもあったもんではない。」

エーデル 「…………。」

セディ 「……おい?」

エーデル 「…………法院など……。」



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