「――エーデルワイス君。キミも考えは変わらないのかね?」
「私はリリエンタール家の執事です。
法院についてどうこう考える立場にはありません。
それは前に申し上げたとおりです。」
「君も頑固だな。
いいかい、エーデルワイス家と言えば名家も名家だ。
執事などという職業に甘んじるべきではない。」
「職業に貴賤はありませぬ。」
「そうとも。今までは、な。」
「……意味深な口調ですね。」
「我が国には法という統制が必要なように、
人間は何かに導かれなければ
生きていけない動物なのだよ。」
「…………。」
「エーデルワイス家が法院へと戻る気があるならば、
推薦の手配と根回しをしてやってもよい。助力しよう。
……父親の様になりたくなければ、よく考えることだ。」
「!!! その話をするんじゃねぇっ!」
「おっと、執事がなんという汚い言葉使いを。
別に君を怒らせるつもりはない。
現実的な選択肢を提示しているのだよ。」
「!?」
「客人か。これは失礼……――!」
「ふっ。
なんだ、人の顔をまじまじと見つめて。
私の顔に目や鼻でもついているか?」
「いや、失礼。なんでもない。
ではまたな、エーデルワイス君。
よく考えておいてくれたまえ。」
「ふっ。
この私にぶつかっておいて、
謝罪の言葉が一言だけか。足りぬぞ。」
「……人の顔に目と鼻は必ずついていると思いますが。」
「洒落た冗談のつもりだったのだが、通じなかったようだな。
この国の人間は皆例外なく、あのように頭が硬いのか?
会話に潤いもなにもあったもんではない。」
「…………。」
「……おい?」
「…………法院など……。」