「いいか、世界には使役する側とされる側がある。
貴様らは全員支配される側だ。
私の駒となり手の中で動いていればよいのだ。」
「ちょっとまさかセディ、貴方そんな理由――。」
「ふっ。それ以外に何がある?」
「……馬鹿ね。
あなた、本物の馬鹿か変人か。
間違いなくそのどっちかよ!」
「ふっ。それほどでも。」
「褒めてないわよっ!」
「たった二人の反乱軍など、今まで聞いたこともない!」
「――『たった二人』。
もしくは『二人も』か。
言葉一つで大きな違いだな。」
「ヴェンツェスラウス、何をぶつぶつ言っている?
事は重大なのだぞ!
法兵、彼らを捕らえよ!」
「ふっ。愚かな。
この私に指一本でも触れることができるなど、
妄言も甚だしい。」
「ゆけ、何をしている!?」
「その身を以て己が愚かさを知るがいい!
――シェレナス・ワイナ・セレクメーセ!
密集せし幾多の氷塊よ、貫き突き進めっ!」
「!
……ウィ・エリス・セルティアス
突風よ我が目前の障害をなぎ払えっ!」
「アイスファランクス!」
「ウィンドスラッシュ!」
「ま、魔導効果が重なって威力が増しただと!?」
「ふっ。
我が氷撃に追い風を掛けるとは。
メルフィア、なかなかやるな。」
「貴方こそ。そんな高精度な魔導を見るのは初めてよ、セディ。」
「ええい、たかが二人相手に何をしている!
他の法兵はおらぬのか!
増援を呼べい!!」
「――無駄ですよ。
彼らに普通の戦いは通用しない。
貴方が言ったように、事は重大だ。」
「!?」
「……貴様が。
貴様がこの国の最高権力者、
ヴェンツェスラウス最高法師か。」
「ええ。一応名目上は。
もっとも、たったいまよりその実権も、
私が掌握することになりますが。」
「なんだと、ヴェンツェスラウス、お前は一体何を――?」
「ああ、挨拶がまだでしたね。
ようこそ宰相エルネスト。
三分割国家が一つ、法と秩序のエル・メイキアへ。」
「!!!」
「なっ……!?」