『眠れる森の国王』
Forbidden Palace Library
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大陸歴614年
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シルバニア王国
王城4階 王室
「寝みぃ。寝かせろ。俺には寝る権利がある。」
「きちんと起きる義務もあります、人間として。」
「いいから寝かせろ。ほんの36時間ばかし。」
「国王、それはなりません。
それに36時間は『ほんの』ではありません。」
「じゃあ72時間ばかし。」
「増えてます、ダメです。」
「なにぃ、俺の目が虚ろになるほど眠いのを知った上での発言か?」
「もう眠くてわけわかんないんですね?」
「ああ。そうだ。ぐー。」
「だから寝てはなりません――国王?」
「……ぐー。」
「洗濯ばさみ攻撃っ!てあっ!」
ぱちんっ
「痛ってぇええええっ!!!」
「起きましたか?」
「当たり前だ馬鹿!」
「馬鹿言う方が馬鹿です。起きてください。」
「もう怒ったぞ。
こうなったらとことん寝てやる。
起こされても起きないからな。」
「本気ですね、国王。」
「ああ俺は本気だともああそうだとも。」
「何威張ってるんですか。」
「俺は王様だ。」
「私は大臣です。」
「……どっちが偉いんだよ。」
「聞きたいですか?」
「なんか負けそうだからやめとく。
とにかく寝かせろよ。
洗濯ばさみはもうなしだからな。」
「わかりました。」
「本当にわかったのか?」
「では今度は、
この眠気覚まし棒で
起こして差し上げましょう。」
「それただの木の棒だろうがっ!」
「いーえ、眠気覚まし棒です。」
「えーい、いちいち繰り返さんでいい。」
「ではきちんと起きてください。
これは大臣命令です。
いいですね、国王。」
「……よし、分かった。
ならば大臣、これは国王からの勅令だ。
俺が眠れるように子守歌を歌え。」
「勅令、と来ましたか――。」
「そうだ、勅令だ。
大臣命令よりも効力は上だ。
勅令には逆らうことは許されまい?」
「それならば仕方ありませぬ。
では不肖この私、大臣が国王陛下のために
子守歌を歌わせていただきます。」
「おう、早くしろ。」
「♪ねーむーれー そーよーかぜのー ゆーりーかごはー」
「うとうとうと……」
パァァァァンっ
「痛っ! なにすんだよ眠りかけたのに!」
「子守歌を最後まで聴かずに寝るとは何事ですか!」
「いやそういうもんだろ子守歌?」
「人がわざわざ歌っているんですから
きちんと最後まで聴きなさい。
それが礼儀というものです!」
「無茶いうなよ。」
「子守歌を歌えという勅令を頂いたからには、
私には最後まで遂行する義務があります。
♪ねーむーれー ゆーめーせかいー いーざーなうわー」
「いいから俺を寝かせろぉぉぉ!」
・
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そして15年後。
「……いいか、ライム。
眠いときには寝ろ。
それが人間の摂理だ。俺は許す。」
「おれんじパパ、
突然どういたしましたの?
いつもより眠そうですわよ?」
「あぁ、いつものことながら眠いぞ。
そもそも、なんでこうなったのか
少し昔のことを思い出してな……。」
「おや、国王と姫様。テラスでこれからお昼寝ですかな?」
「そうなの、お昼寝なの。」
「では不肖この私、大臣が勅令により国王陛下と王女様のために子守歌を……。」
「俺が悪かった!
あの勅令は取り消す!
だから、頼むから静かに寝かせてくれぇぇぇっ!」
「♪ねーむーれー そーよーかぜのー ゆーりーかごはー」
おしまい☆
あとがき
レミィは何故よく寝るのかという話(ちょっと違う)。
眠いときに書きました。
それだけです(ダメじゃん)。
っていうか、なんだか子守歌もよく分かりません。
歌詞も適当に作っただけなので気にしないでください。
というわけで、本当はライムの父親はオレンジだったというお話でした(それもちょっと違う)。
ちなみにこのシリーズ、たぶん続きます。
ローラとオーロラの続編とか、フィルの街角取材とか。そんな話を。
書いてる私が楽しいし。あぁ、なんか単純な理由だなぁ。
閑話休題。
なにはともあれまた次回作で。
ではでは。
フランス王権廃止から209年目の日に
木枯 吹雪
2001/09/21 初版
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