『目指せ、一攫千金探偵団! II』 Forbidden Palace Library::

大陸歴715年




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シルバニア王国
謎の隠れ家

自称、博士 「ウヒヒ。ウヒウヒ。」

助手っぽい 「なんですか、突然変な笑い声だして。」

自称、博士 「わけを聞きたいかね?」

助手っぽい 「いいえ。」

自称、博士 「そうか、聞きたいか。」

助手っぽい 「聞きたくありません。」

自称、博士 「では心して聞きたまえ。」

助手っぽい 「無視ですか。」

自称、博士 「世界の平和とは、如何にして為されるべきだと思うかね?」

助手っぽい 「博士が何もしなければ世界は平和かと。」

自称、博士 「ふむ、実に真理を突いているな、君。」

助手っぽい 「自覚しているならご自分でなんとかしてください。」

自称、博士 「そんなわけで世界平和のためにおれが一肌脱ごうと思う。」

助手っぽい 「理解してませんね、微塵たりとも。」

自称、博士 「何故、人は醜い争いをするのだと思うかね?」

助手っぽい 「まともな回答をお望みですか?」

自称、博士 「無論だ。」

助手っぽい 「誰しも心の奥底には欲望があるからではないでしょうか。」

自称、博士 「残念だが、当たらずとも遠からじ。」

助手っぽい 「どっちなんですか。」

自称、博士 「唐辛子ではないぞ。」

助手っぽい 「わかってます。」

自称、博士 「七味唐辛子と一味唐辛子はあるのに何故十六味唐辛子はないのかね。」

助手っぽい 「知りません。」

自称、博士 「こんど作ってみようと思う。」

助手っぽい 「世界平和はどこに行ったんですか。」

自称、博士 「そう、辛みを追求する人間の欲望についてだったな。」

助手っぽい 「全然違います。」

自称、博士 「いくら欲望が渦巻いていようと、
 それが手の届かぬ高嶺の花であれば
 争ってまで手に入れようとはしないだろう。」

助手っぽい 「一理ありますね。
 ですがその高嶺の花を手に入れるために、
 人間は道具を開発するでしょうね。」

自称、博士 「そう、その通り!
 つまりだ、人は争うための手段を
 有していることが誤りなのだ。」

助手っぽい 「なるほど。それで?」

自称、博士 「争うための手段とは何だと思うかね。」

助手っぽい 「武器とかですか?」

自称、博士 「そうだ。」

助手っぽい 「武器と言っても様々な種類がありますが。」

自称、博士 「具体的に言えばバールのようなもの。」

助手っぽい 「思いっきり抽象的じゃないですか。」

自称、博士 「バールのようなもののどこが抽象的だと言うのかね。」

助手っぽい 「その表現全てがです。」

自称、博士 「だがあれを無くせば世界は平和になる。」

助手っぽい 「なるんですか。」

自称、博士 「バールのようなものがなければ、
 この世の空き巣も金庫破りも強盗も
 皆無力になるだろう。」

助手っぽい 「あんまりならないと思います。」

自称、博士 「もちろん武器はバールのようなものだけではない。」

助手っぽい 「でしょうね。」

自称、博士 「バールと似たものも無くすべきだ。」

助手っぽい 「似たものですか。」

自称、博士 「具体的に言えばボール。」

助手っぽい 「単に発音が似てるだけじゃないですか。」

自称、博士 「似ていることには変わりないだろう。」

助手っぽい 「似ているの次元が違います。」

自称、博士 「世界平和のためにはそのような些細なことにこだわっている場合ではない!」

助手っぽい 「些細なんですか。」

自称、博士 「そうだ、ボールは時として凶器になりうる!」

助手っぽい 「どんなボールがですか。」

自称、博士 「雪球。」

助手っぽい 「雪合戦でもするおつもりですか。」

自称、博士 「あれ凍らすと痛いんだぞ。」

助手っぽい 「知ってます。」

自称、博士 「ほら、痛ければ立派な凶器だろう。」

助手っぽい 「避ければいいじゃないですか。」

自称、博士 「王国は雪球所持者を凶器取締法違反で逮捕するべきだな。」

助手っぽい 「うかつに雪合戦もできませんね。」

自称、博士 「他にも凶器はまだまだある。」

助手っぽい 「なんですか。」

自称、博士 「具体的にはヒール。」

助手っぽい 「また洒落ですか。」

自称、博士 「洒落ではない!立派な凶器ではないか!」

助手っぽい 「確かに暴漢に襲われそうなときには武器になりますね。」

自称、博士 「そうだ、両手に装備したハイヒールは時として武器になりうる!」

助手っぽい 「いえ、両手に装備することはないと思います。」

自称、博士 「君のそのヒールも恐らくかなりの悶絶ものだろう。」

助手っぽい 「試してみたいですか?」

自称、博士 「いや、遠慮しておこう。その趣味はない。」

助手っぽい 「何事も経験ですよ?」

自称、博士 「ともかく世界が平和になれば。」

助手っぽい 「ですからなりませんて。」

自称、博士 「マルス党の支配とて思いのままだ。ウヒヒ。」

助手っぽい 「ひょっとして、
 党の7代目総統になれなかったことを
 まだ根に持っているんですか?」

自称、博士 「だからあれは、おれの方から辞退したのだ。」

助手っぽい 「どこがどう辞退だと言うのですか。」

自称、博士 「たまたま全会一致で私が選ばれず、
 たまたま全会一致で役職を降ろされ、
 たまたま全会一致で入党資格を取り消されただけだろう。」

助手っぽい 「それを人は追放と呼びます。」

自称、博士 「おれの辞書にそんな言葉はない。」

助手っぽい 「はいはい。」

自称、博士 「信じてないな。」

助手っぽい 「はいはい。」

自称、博士 「返事は一回でよろしい。」

助手っぽい 「いやです。」

自称、博士 「おれに逆らうか。」

助手っぽい 「はい。」

自称、博士 「まずは世界平和の第一歩として、」

助手っぽい 「第一歩として?」

自称、博士 「この三種の凶器を無くすべきだと思うんだがどうかね?」

助手っぽい 「それ以前に疑問なんですが。」

自称、博士 「なんだね?」

助手っぽい 「本当にマルス党を支配するために世界平和をお望みですか。」

自称、博士 「ウヒヒヒヒ。
 そんなのは序の口だ。
 無論そこにはもっと高尚な目的がある!」

助手っぽい 「高尚な目的ですか。」

自称、博士 「世界が平和になったら。」

助手っぽい 「なったら?」

自称、博士 「おれが世界の支配者になる。」


すっ

自称、博士 「ん?なんだね、突然ヒールを脱いで?」

助手っぽい 「博士、目を瞑って下さい。」

自称、博士 「ん?ああ、キスでもしたくなったのか。」

助手っぽい 「違います。」

自称、博士 「君も照れ屋だな。
 わかった、わかった。
 目を瞑っているからその間に優しく――」


カコーンっ


お・し・ま・い☆


あとがき

またわけのわかんない話。もう全然探偵団じゃないし。
でも面倒なんでこのタイトルのまま行きます。
たまにはこういう後先何も考えない作品も書きたくなるんです。
ひょっとして私、この博士とある意味いいとこ勝負ですか。

閑話休題。

「ああ、もうひとつ凶器があったな。」
「なんですか。」
「ビールだ。あれは人を酔せわて生体兵器に変えてしまうではないか!」
「ビール瓶の方がよっぽど凶器だと思いますが。」
「試してみないかね?」
「試す?ビール瓶で博士を殴ればいいんですか?」
「いや、生体兵器麦芽ことビールの威力調査にだ。」
「酒場につき合ってほしいなら最初からそう言って下さい。」
なんかこの二人実は仲いいんじゃなかろうか。

なにはともあれまた次回作で。
ではでは。


           終戦記念日に(全ての戦争犠牲者の冥福を祈りつつ)
                        木枯 吹雪


2004/08/15 初版

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