『真実の継承者(前編)』
ブランドブレイ王国 ステラ港 星の港、ステラ。 遙か昔の言葉でその意味を持つ、この港の歴史は古い。 一説には、ラファエル王国以前にまで……つまりは旧文明時代まで歴史をさかのぼれるという噂もある。 いくつもの街道が交わる要所となっているこの都市は、大陸で最大の規模を誇る。ありとあらゆる物が揃うため、「市場都市」と称され事もある。 唯一の難点は、都市規模が故に物価も高いということだ。 |
(とりあえず船でセリフォスから大陸に出たはいいが……。
これからどうするかだな。馬車にでも乗って、
バレンタイン−シルバニア−セントラル経由でシェザまで向かうか……。)
(シェザまで行っておけばアリバイも作れるしな。
あ、そうだ、たしかあの町の周辺って飛べない鳥がいるんだよな。
それでも見に行くか……本当に飛べないんだろうか?)
(青い大氷河が海岸沿いにあるっていう話も聞いたことあるよな。
……これって結構おいしい観光旅行だな、おい。
旅費は全部じっちゃん持ちだし。やりぃっ!)
(そうだな。
適当に観光したあとに『やっぱりそんなものなかったぜ』って言って
土産でも持って帰ればいいんだし。シェザの特産品ってなんだろう?)
(……しかしこの港、どこまで行けば街外れの馬車駅に出るんだ?
そりゃ大陸一大きい街なのかもしれないけど、これは大きすぎないか?
まだまだ先まで街並みが続いていやがる……誰だよ、責任者出てこい。)
(ん?
……。
何の音だ?)
(!!!
なんだ?空が……空が裂けた?
黒い亀裂?空に?)
(うわわわわわ!?
なんだなんだなんだ?
いったいなにがおこっているんだ?)
「ぐっ……衝撃波!?」
「きゃああああっ!」
「! 家が崩れる……っておい、家の下に人がっ! 危ないっ!
ウィ・エリス・セルティアス 突風よ我が目前の障害をなぎ払えっ!
ウィンドスラッシュっ!!!」
「……ふぅ。おい、大丈夫かっ?怪我はないか!?」
「あ、はい、ありがとうございます……えっと。」
「え?きゃああああっ!?」
「うおっ!?なんだぁぁぁっ!?」
(また衝撃波かっ!?……さっきのとは違うっ!?
……なんだ、この衝撃波!?……精神が……揺れる!?)
「あ…………気が……遠く……な…」
「!? おいっ!?」
(気を失った?
……俺も……今の衝撃波で……よくわかんないけど気が遠く……)
「!!!」
(だめだっ!
俺まで気を失ったらこいつはどうなるっ!?)
「何が、何が起こっているんだ?」
「!!! 亀裂から光がっ!?」
(光と一緒に何かが出てきたっ……人?いや、青い肌っ!?
な、なんだこいつら、肌が青いぞっ!?
つ、次から次へと出てくるっ!?)
へぇ、あの衝撃にも耐えたのはお前一人か。
GYY KVP OH
この世界の人間にしてはなかなか強い精神力を持っているみたいだな、青年。
丁度良い。お前に一つ聞きたいんだけどよ。」
「…………俺?俺か?」
(……うわっ!?周囲の人間みんな気絶していやがるっ!?え?起きているの俺だけ?
やべぇよ、おい。どうするんだよ、話しかけられちまったぞ。)
「そう。
お前だ。
早いところこの世界の指導者を出せ。
さもなくば300年前と同じことになるぜ。」
(300年前? 300年前に起こった大きな事件は……一つしかないよな。
かつて大陸を統一していたというラファエル王国が異世界からの侵略によって崩壊した。
……ってことは、ひょっとしてこいつらが……そうなのか?)
「ふっ。やはりまた現れたか、エンディルめ。」
「!?」