『真実の継承者(前編)』
セリフォス共和国 首都セリフォス コバルト海に浮かぶ大陸の離島、セリフォス。 この島の歴史は大陸歴と同時に始まると言われている。 かつて存在したラファエル王国の崩壊時、王都シャロンに住んでいた人々の逃げた先がこの島だったと、歴史の教科書では教えている。 もっとも、幻の王都シャロン自体が大陸のどこに位置していたのか未だに知られていないため、その真偽は明らかにされていないが。 |
「……ウィルバー兄さん、本当に行くの?
だって、大陸にはエンディルが攻めてきているんだよ?
わざわざそんなところに飛び込む事ないじゃない。」
「ああ、だからこそ行くんだ。
エンディルとの戦争、それも300年前とは規模が格段に違う。
とすれば、奴は歴史の裏から再び登場するはず……。」
「……よくわからないけど、死なないでね。」
「ああ、ありがとよ、オービル。」
「だってウィルバー兄さん死んだら葬式とか事後処理とかでお金かかりそうだもの。」
「……もし俺が財産もってたら死んでも構わないと?」
「そうとも言うかもしれない。」
「オービル、お前というやつは……」
「痛い痛い、冗談だってばウィルバー兄さん。」
「とにかく、後は任せたぞ。 次はいつ戻れるかわからないからな……。」
「いってらっしゃい。手ぶらで帰ってこないでね。」
「それは俺におみやげ買ってこいと?」
「そうとも言うかもしれない。」
「オービル、お前というやつは……。
まぁいいや。
……じゃ、行って来るぜ。」
「? どこの方向見ながら言っているのさ?」
「玄関に飾って有る肖像画に言ってるんだよ。」
「前から気になっていたんだけどさ、この人、誰なの?」
「マリー=アシスト。
俺達の祖先だ。
そして、子供の顔を見ることなく死んだウィリアム=アシストの妻。」
(俺はこの日のために可能な限り魔導を身につけてきたんだ。
図書館地下3階の封印を解いてまでも俺は禁呪を手に入れた。
そう、ウィリアムの……仇を討つために。)
「……待ってろよ。
必ず、見つけだしてやる。
そして、仇を討つ。……討ってやるっ!!」