玄関


ふむ……よかろう。
他ならぬ貴方の願いだ。
断るわけにもいくまい。

すまぬな……この恩は一生忘れぬ。

いや、私こそいつも貴方に世話になっていたからな。
……ラッセル!
ラッセル!どこにいる?

はい、ここに。
して、御主人様。
如何なるご用件でしょうか?

この青い本を書庫の一番奥に入れておけ。

かしこまりました。
では失礼いたします。
ごゆっくり……

ありがとう。
友よ、一つ約束をしてくれ。
もしもあの本が人の手に渡りそうになったなら……その時は貴君の手で燃やしてくれ。

……わかった。

実はもう一つ預けたい物があるのだが。

他にもなにか?

この帽子なのだが……。
貴君も存じているように、この帽子も人の手に余る物。
なれば人の手の届かぬ場所に置いた方が安全というもの。

なるほど……。
確かに、抗魔の帽子などというものは人の手に渡るべきではないな。
分かった。それも預かろう。

かたじけない……。
……友よ、かぶってみてはいかがかな?
似合いそうな気がするのだが……。

……こうか?

おお、お似合いですぞ。

そうか、ありがとう。

では私はこれで失礼するとしよう。
もう貴君とも会うことはあるまい。
……達者でな。

貴方こそいつまでも元気で。

左様、ならばこれにて御免。

……。


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