『僕は、語らない』
「誰か、いる?」
「あ、おじさんおじさん。」
「おー、グランか。元気?」
「元気元気ー。」
「そうか。いい子だ。」
「あら、エリック。来ていたの?」
「義姉さん。久しぶり。」
「どうしたの、突然?
来るんなら連絡ぐらいくれればよかったのに。
そうしたら貴方の好きなマカロニグラタン作ってあげるわよ……。」
「いや、いいんだ。ちょっと寄っただけだから。」
「……酔ってるの、酔ってるの?」
「いや、寄っただけだって。
実は明日から僕の所属する旅団が遠征することになってね。
長くなりそうだからその前に顔だけでも出しておこうかと。」
「夜逃げするの、夜逃げするの?」
「……グラン。この口か?そういうこと言うのは?」
「いたいいたい、エリックおじさん痛い痛い。」
「あら、そう……じゃああまり長居もしていられないわねぇ。」
「ところでグリフィスの奴はどうした?」
「あの子ならさっきまでその辺にいたんだけど……。」
「あ、いた。」
「ふぅ……また扉壊したの?グリフィス。」
「……あ、エリック兄貴!」
「誤魔化さないのっ。」
「ちぇっ。ごめんなさいっ。
……それで兄貴、
今度はどのぐらいここにいるの?」
「だから僕のこと兄貴なんて呼ばないでってば。」
「エリックおじさん。」
「……それもなんかヤだな。」
「えー、でも兄貴すげーじゃん!
カイザリアの軍隊に入隊、しかも北方調査部隊に配属されたんだろ!?
かっこいーっ!」
「格好よくなんかないよ。きっと雑用押しつけられるだけで。」
「俺も将来、兄貴みたいに強くなるんだっ!
そして傭兵になって大陸中駆けめぐるんだっ!
傭兵ジオみたいにさっ!」
「それはそうとエリック、
遠征に行くんなら気を付けてね。
時々でいいから手紙書きなさいよ?」
「……手紙書いてもとどく場所かどうかはわからないけど、
善処するよ。
心配ありがとう、義姉さん。」
「だって貴方の親類はもう私達しかいないんですから。
何か困ったことがあったらまたいつでも来ていいのよ?
遠慮しないでね。」
「うん……義姉さん、やっぱり6年前から変わったね。
人の死に対して臆病になった。
それは、僕にも言えることだけど。」
「それはそうよ……身内が亡くなったんですもの。
グリフィスの母親……私の最愛の姉が。
だからあなただけは……。」
「……うん、わかってる。
あ、そろそろ時間だ。
じゃ、行ってくるね。」
「行ってらっしゃい…ちゃんと、帰ってきてね。」