『僕は、語らない』
「……ライアン=プリーストリィ。」
「はい!」
「そして新入りのエリック=ハミルトン。」
「はい!」
「全員揃ったな?
では我々、第十八次北方調査隊の任務を説明する。
今回はアイレス地方への街道調査。それが主目的である。」
「街道調査?」
「ラファエル王国崩壊直後。
つまり今から600年前、何らかの原因によって
アイレス港への道が塞がれたのは知っているな?」
「『風の港』……アイレス。
ブランドブレイ王国の都市ステラ港に匹敵する規模を持つも、
一夜にしてその道が閉ざされ、以後誰も辿り着いたことがないという都市。」
「そうだ。かつて何度も調査隊が派遣されたが、
600年たった今でもその原因は明らかになっていない。
我々の目的は、その失われたアイレスへの糸口をみつけることだ。」
「メンデル隊長。
それだけの年月に渡り何も手がかりがないままということは、
既にアイレス港は現存していないのでは?」
「既に廃墟と化しているか、
あるいは消失しているかのどちらかと言いたいのか?
それを調べるのが我々の任務だ。」
「……なるほど。」
「他に質問はないか?なければ出発する。」
「ん?今誰か何か言ったような?」
「……いや???気のせいじゃないか?」
「まぁよい。では、出発だ!」