『僕は、語らない』
(目的調査地はまだまだ先かぁ……。
これから数日はこのまま歩き続けるのか。
……馬車ぐらい使わせてくれてもいいのに。)
「よぉ。確かお前、このあいだこの調査隊に配属されたやつだったよな?」
「あ、うん。君は?」
「さっきの号令の時聞いていたかもしれないけど、
俺はライアン。ライアン=プリーストリィ。
同い年同士仲良くやろうぜ。」
「あ、うん。
僕、エリック。
エリック=ハミルトン。」
「ハミルトン……?
って、軍事家を代々輩出しているあのハミルトン家か!?
そりゃすげぇっ!」
「……そうなの?知らない。」
「なんでその子孫が知らないんだよ。
このカイザリア帝国が建国されたときも、
初代参謀を務めたっていうあの家系だろ?」
「あ、その話本当だったんだ。
昔よく聞かされていたけど、てっきりただの冗談だと思ってた。
わぁ、それはすごいや。」
「…………おーい。」
「でもそれ、本当に本当なの?」
「ああ。ハミルトン家の一族から出た軍人の数は
両手では数えきれないほどだ。
もちろんこれには分家のベル家も含んでいるがね。」
「メンデル隊長……。」
「かつての対エンディル戦の前夜、
カイザリア帝国が極秘にあるものを捜索しようと
シェザまで隠密兵を派遣したことがあった。」
「シェザ?そこになにがあったの?」
「……それはともかく、
その時も信頼面からしてハミルトン家の一族の者が、
つまりベル家の者が選ばれたそうだ。」
「……それでシェザでなにを探したの?」
「…………。
……さぁな。
詳しくは『3番街の物語』を参照してくれ。」
「???」
「いや、気にするな。さ、先を急ぐぞ。」