『僕は、語らない』
「……ここから先の地域は、
定義上では旧アルゲンタインの領土となっていたが、
現在は事実上どこの国にも所属していない。」
「どこにも?
アルゲンタイン帝国崩壊の後、
カイザリア帝国がその全てを引き継いだにもかかわらず?」
「その原因は未だはっきりとはしていない。
だが言えることは、今や歴史から抹消されようとされている、
地図にも載っていない空白の地域に我々はいるということだ。」
「測量すらされていないのか?」
「……ライアン。方位磁石を見て見ろ。」
「方位磁石? ……なぁっ!?回転してるっ!?」
「そう。このあたりから磁場が狂い出すのだ。」
「磁場が……どうして、また?」
「かつての人間の過ちだ。
世界の法則のほんの一部を、
全ての物理法則だと思いこんでいたが故の……。」
「隊長、答えの意味がいまいちよくわからないのですが……。」
「いずれ、分かるときが来る。
それよりもトンネルが見えてきたぞ。
これで目標までおよそ半ばの距離を来たことになるな。」
「半分、か。」
「え、でも入り口、崩れてますよ。
崖崩れをおこしてます……。
調査はここまでで引き返します?」
「いや、強行突破だ。……爆破する。」