『僕は、語らない』
「……なぁ、エリック。何かおかしいと思わないか?」
「なにが?」
「全てがさ。
今回の命令からしてそうだ。
確かにカイザリアは定期的に北方調査を行っている。」
「うん。」
「けど、さっきの隊長の発言。
『アイレスには行かない。』
どういうことだ?」
「確かに変すぎる……何を考えているんだろうね?」
「何か言った?」
「いや、なにも言ってねぇよ。」
「……僕だけなのか?何かに見られている気もするんだけど……。」
「疲れているのか?」
「かもしれない。」
「……なぁ、エリック。
俺達は……もしかすると、
とんでもないことに足を踏み入れようとしているんじゃねぇか?」
「僕も、薄々そう思っていたところなんだ。」
(あるいは、
既に足を踏み入れてしまったか……。)