『僕は、語らない』
「その崩壊が故に、
多くの生物はその姿を変え、
世界地図は一瞬にして激変した。」
「世界が崩壊したその時、
この惑星はもはや自己回復すらできない状態に陥っていた。
人間が自ら蒔いた種が故に。」
「……だが、この大陸に残った人類は残された科学技術を、
皮肉にも対火星用に開発されていたテラ・フォーミング技術を
この地球自身に応用して急速なる自然の再生を試みた。」
「……テラ・フォーミング?」
「そして、それは成功した。
地殻変動した大地に木々は育ち、大陸に緑があふれることとなった。
それが今日我々の住むこの大陸なのだ。」
「……まさか……そんな……対、火星用の……技術?」
「そう、かつてマルスと呼ばれていたその星への技術を。」
「……隊長、今度は一体何をする気だ?」
「持ってきた火薬を設置するのだ。
追っ手が来ないように、
このトンネルを封鎖する為に。」
「!?
ちょっと待てよ!
そんなことしたら帰れなくなるだろうが!」
「構わん。目標は北方に残された古代の知識だ。
それさえ手にすればなんとでも帰ることはできる。
だがそれより、カイザリア兵が追ってこないように道を封じるのが先決だ。」
「隊長、あんたは何をそんなに心配して……」
「……ふっ。追ってきたのがカイザリアの兵でなく残念だったな。」
「!?」
「誰だっ!?」
「ふっ。やはり来て正解だったか。」
「どういう意味だ?」
「ふっ。今回の北方調査隊は挙動が不審すぎたということだ。」
「……お前は誰なんだ?」
「ふっ。
貴様が知る必要はない。
特に、これから死に行く者にはな。」