『僕は、語らない』
「……げほっ、げほっ……んんっ……」
「……ふっ。危ないところだった。
理力での制御に失敗して魔力が暴走したか。
それも通常では考えられない放射量の魔力が……。」
………………。
「ふっ。
私の魔導を以てしても完全に防ぎきれないとはな。
……もっとも、もはや貴様に私の声は届いていないだろうがな。」
………………。
(……隊長。目を見開いたままもう動かない……。
死んじゃったの、か……?
ってあれ? なんだ? 声が……変だ……。)
「ふっ。
貴様もまた膨大な魔力を至近距離で直に浴びたのだ、
体が変異しない方がおかしい。」
「……ごほっ……んっ……へ、変異?」
「例えば、貴様の髪の色のように。」
「! エンディルのように……青くなっていく……!?
……ごほっ! けほっけほっ……んんっ。
息苦しい……なんでこんなに……しゃべりづらいんだ。」
「……大丈夫か……エリック……。」
「気管が……んっ……げほっ……。
呼吸器系統が……おかしいみたいだ……。
だが君の体こそ大丈夫か、ライアン?」
「相手の傷をいたわる前に、自らの命の心配をしたらどうだ?」
「!!!」
「……ふっ。
残った二人のうち、片方は先ほどの爆発で致命傷を負い、
そしてもう一人は満足に呼吸もできない、か。」
(…………僕は、ここで殺されるのか……?
魔導の詠唱もろくにできない状態のまま……。
僕の全ては、ここで終わるのか!?)
「……本当ならば今すぐにでも止めを刺してやりたいところだが。」
「!?」
「……先ほどの魔導の暴走で、
急激に大量の魔力を浴びたせいだろう。
この私といえども掌からの理力の放出が安定していない。」
「え……?」
「つまり、一時的に魔導を使えそうにないということだ。
かといって貴様らにとどめを刺すためだけに回復まで半日も待つ訳にはいかない。
……仕方あるまい。今回ばかりは特別に見逃してやろう。」
「…………。」
「たが貴様が今回の一件で見聞したことを一言でも誰かに語れば、その命はない。
地の果てまでも必ず追いかけて貴様らを抹殺に行く。
いいか、忘れるな。必ずだ!」
「……助かった……の?」
「……の、ようだな。
だが、エリック……。
俺はどうやら……助かりそうにない……ごほっ」
「ライアン!」