『僕は、負けない』
「あー。
おはよう、ファースト姉さん。
ふぁぁ。」
「サード! 目が覚めたんなら、
ぼーっとしてないで裏口から牛乳とってくる!
それが貴方の毎朝の役目でしょっ!?」
「あ。う、うんっ。」
「はい、とってきたよ。」
「よし。
そしたら朝ご飯食べな。
冷めちまうよっ。」
「うん。」
「いただきます。」
「いただいてます。俺はもう食べてるぞ。」
「おはようセカンド兄さん。
……あれ?
パパはもう王城行ったの?」
「ああ、みたいだな。今夜も遅いとか言ってたな。
そうだ、サード。
これ、お前に届いてたぞ。」
「なにこの手紙?」
「王立騎士団からの加入推薦書だ。
あと一年で初等学校も卒業だろう。
幹部候補として入らないかというお誘いみたいだぞ。」
「……なんで僕なんかが。」
「そりゃお前が騎士団長の息子として、
期待されているからだろう。
ああ見えてもパパは有名な騎士団長なんだぞ。」
「でも……僕には、無理だよ。
だって負けたらどうするのさ。
死んじゃうよ?怖いんだよ?」
「だけどな、サード。
時にはそれでもなにかを守りたいって思うことがあるのさ。
まだ今は分からなくても、そのうちわかるさ。」
「そんなに言うんだったらセカンド兄さんが
騎士団に入れば……――っ!
ご、ごめん。」
「いや。こっちこそごめんな。
出来ることなら、俺が代わりに行ってあげたいけど、
右脚が使えないから……。」
「ごめん、セカンド兄さん。
そんなつもりじゃなかったんだ。
ほんとにごめん。」
「いいさ――事故でこの右脚が動かなくなってから、
二本の松葉杖がないとどこにも行けないのは事実だ。
今更どうこう言っても、仕方のないことだ。」
「うん……。」
「――サードっ!
飯食べ終わったんなら
無駄口叩いてないで早く登校の準備しなっ。」
「あ、う、うん。」
「ほら、弁当。
持ったらとっとと学校行ってきな。
遅刻するよっ!」
「い、いってきまーす!」