Forbidden Palace Library #00 「失われた7枚」シリーズ 外伝

『僕は、負けない』



ブランドブレイ王立第十七初等学校、正午。


フィオナ 「サード君はね、絶対負けない子なのよ。」


もぐもぐもぐ


サード 「うん、なにが?
 このお弁当の鶏肉さんに?
 それともブロッコリーに?」

フィオナ 「ううん、じゃなくてお姉さんの話。
 サード君には、もっと勇気があるはずなのよ。
 そんなのへっちゃらってぐらいにならなきゃ。」

サード 「でもさ、ファースト姉さんにはやっぱり逆らえないよ。
 だって怖いもん。ほら。もしもさ機嫌損ねてパンの中に
 また胡桃を殻ごと入れられたりとか。ああどうしよう。」

フィオナ 「え、殻ごと?」

サード 「うん。今月に入ってからはもう3回も。」


きょろきょろ


フィオナ 「? なにしてるの?」

サード 「うん、ファースト姉さん聞いてないよねって思って。
 聞かれたらきっとまた雷が落ちるんだ。
 もうね、目がつり上がって凄い形相でさ、」

フィオナ 「くすっ。
 ここは学校よ?
 ここまでお姉さんが来るわけないでしょ?」

サード 「でもファースト姉さん凄い耳してるんだよ。
 僕が100メートル先で悪口言ってても走って追いかけてきて
 こう耳を引っ張ってああもう思い出しただけで痛い。」

フィオナ 「くすっ。」

サード 「え、なになに? なんか僕おかしなこと言った?」

フィオナ 「ううん。サード君って面白いなぁって思って。」

サード 「え、僕なんかちっとも面白くないよ。
 セカンド兄さんの方がいつもにこにこしてて、
 何も面白いことなくてもにこにこってあれ何の話だっけ?」

フィオナ 「ん、何の話かしらね?」

サード 「そういやずるいんだよセカンド兄さん。
 僕には胡桃の殻入りパンが出てきたときでも、
 どういうわけか殻の入ってない胡桃パンばかり選ぶんだ。」

フィオナ 「そんなに胡桃パンが好きなの?」

サード 「ううん。
 胡桃パンには固い殻の嫌な思い出ばかりだから、
 何も入ってないうんと柔らかいパンが一番好き。」

フィオナ 「ん……じゃあ、わたしがパン焼いてあげるねっ。」

サード 「え? フィオナちゃんが?」

フィオナ 「あ、なぁに、その疑るような目は?
 信じてないでしょー。
 こう見えてもちゃんと特訓してるんだからっ。」

サード 「ん?パン屋さんにでもなるの?」

フィオナ 「ぶーっ。
 残念でした、違いまーす。
 ――将来お嫁さんになったときのために、です。」

サード 「あ、そうなんだ。
 それで、
 誰のお嫁さんになるの?」

フィオナ 「…………馬鹿。」

サード 「え、なに?なんで怒ってるのさ?」

フィオナ 「もうパン作って持ってってあげないもん!」

サード 「えーっ!?」

フィオナ 「……くすっ。
 嘘よ、サード君。
 じゃあ学校終わったら準備して、夕飯時に持っていくわね。」

サード 「あ、うん。ありがとう。」


ごーん ごーん ごーん


フィオナ 「あ、お昼休みが終わっちゃう!
 じゃ、放課後パン焼いて持っていくからね。
 またあとでね、サード君♪」

サード 「うん、あとでねー。」


たったったっ

サード 「……フィオナちゃんのパンかー。
 わくわく。
 あ、午後の授業に遅刻するっ!」




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