『僕は、負けない』
「フィオナちゃん、まだかな。わくわく。」
「……何あんた『わくわく』とか口に出してんのよ。」
「え、だってフィオナちゃんが
手作りのパンを持ってきてくれるんだよ?
ファースト姉さん見たく、胡桃が殻ごと入ってないやつ……。」
「……サード。なんか言った?」
「い、いや、何も。何も言ってない。」
「姉貴、そのぐらいにしてそろそろご飯にしないか?」
「……そうだね。
もうじきあの子も来るでしょうし、
先に並べておこうかね。」
「ほっ、セカンド兄さんありがとう。」
「ガールフレンドと夕飯一緒に食べるのは楽しみかい?」
「ガ、ガールフレンドだなんて、
そんなんじゃないよ。
ただ小さい頃から幼なじみで、いつも一緒にいるだけで。」
「……そういうのをガールフレンドっていうんだよ。」
「え?そうなの?
……で、僕まだ古代世界語よくわかんないんだけど、
それどういう意味?」
「あー、えっとだな、つまり……。」
「あ、フィオナちゃんだっ!
珍しく表玄関から来たのかな?
はーい、いま開けるねーっ!」
「あーあ、そんなにはしゃぐなってば。
ほら、みっともないぞ。
……聞いちゃいないよ。」
「ま、今日ぐらい無礼講かしらね。」
「……あれ?裏口からもノック音が聞こえなかったか?」
「え?」
「ごめんくださーい。」
「おや、あの声はフィオナだね。」
「……え?
…………姉貴、じゃあ、
サードがいま表に迎えに行ったのは、誰だ?」
「……え?」
「きゃああああああっ!」
「!?」
「!!!」
「フィオナ、どうしたのっ!?」
「姉貴、待てっ!
……ちくしょうっ、
この足が自由に動けば!!!」