『僕は、負けない』
「はーい、いま開けるねーっ。」
「今晩は。」
「!?
えっと、あの、
ど、どなたでしょうか?」
「『アーネスト・ガーディアン』の使者だ。」
「えっと、アーネスト、さんですか?
あ、あの、
どういったご用件で……。」
「宰相命令の遂行に来た。」
「命令……宰相?」
(え?
この国に宰相なんかいたっけ?)
「!?」
「こういう用件だ。」
「!!!」
「!?!?」
「ほう、避けたか。武術の心得は一応あるようだな。」
「い、いきなり剣を抜くなんて、一体なんで……!?」
「サード、退け! そいつは――――。」
(!
セカンド兄さんが笑ってない!
こんな険しい顔、初めて見た……っ!!)
「ほう、セカンド。
まだ生きていたか。10年ぶりだな。
足の具合はどうだ?」
「!!!
……また来たのか、ヒューバート。
ああ、貴様のせいで俺の足は見ての通りだ!」
「セカンド兄さん……どういうこと?」
「こいつらは、アーネスト・ガーディアン(Ernest Guardian)。
……その最初の名前を古代世界語ではなく、
エングリシアで発音すれば正体はお前でもわかるだろう。」
「Ernest Guardian……。
エルネストの守護者!?
あの、エルネストって――。」
「ラファエル王国、宰相エルネスト。」
「!!! え、だけど、
ラファエル王国は300年以上前に
滅びたんじゃ……。」
「その通り。確かに滅びた。
だが、王国補佐官を祖とする私らの中では、
あの王国はまだ生きているのだよ。」
「王国補佐官!?」
「7人いた補佐官のうち4人に連なる子孫の者が、
エルネストの発令した全ての命令を自発的に遂行している。
それが『アーネスト・ガーディアン』だ。」
「目的は――?」
「目的が10年前と何ら変わっていないのであれば、
こいつらは、俺達ノーベル家を
根絶やしにしようと来たはず。」
「!」
「いや、厳密には――逃亡者を粛正に来ただけだ。」
「と、逃亡者っ!?」