『僕は、負けない』
「片方だけの松葉杖とその足では、
飛ばされた松葉剣を拾いに行くこともできまい。
今度こそ、その命を絶やしてやろう。」
「!
床に転がって逃げるつもりか。
だが、それがいつまで持つかな?」
「よかろう。
ならば、その胸に抱えたもう一本の松葉杖ごと、
お前の首を凪ぎ払ってやろう。」
「ぐっ!」
「……覚悟は、出来ているな?
古の命令に、従いて。
宰相命令9968号、執行――――。」
「今だっ!!!!」
「!!!? なにっ!?」
「ツァアアっ!!!」
「そこまでだ、ヒューバート……!」
「ぐほぁっ……!?
ま、まさか、左の松葉杖にも刃が仕込まれていたとは!
油断、したかっ――!」
「俺が貴様に受けた苦しみを、そっくりそのまま返してやるっ!」
「ぐぁあああああああああっ!」
「これで、俺と同じだ!
10年前、貴様が俺の足を傷つけたのと同じ足を、
貴様も引きずり続けるがいいっ!」
「こんな、こんな馬鹿な――っ!」
「……ノーベル家を侮るな。
金こそないが、ブランドブレイ騎士団の家系として
一、二の強さを誇れるだけの力は備えている。」
「家族全員がな。」