『僕は、負けない』
「シルバニア公国バレンタイン港より伝令!
港湾区内部の至る所にて空間の裂傷を確認とのこと。
間違い有りません、エンディルの侵攻の前兆です!」
「ついに来たか、この時が――。」
「これは、ミリオン王子っ!」
「礼はいい、そのまま報告を続けろ。」
「はい。」
「公国の軍事力はどうなっとる?」
「計3個師団全てが公都にて待機中です。
その他、各都市・地方レベルでの市民軍も存在しますが、
治安維持以上の防衛能力はないとのことです。」
「動ける軍隊が存在しない、ということか?」
「事実上、そうなりますな。」
「何のための軍隊だっ!
公都の人間だけが公国の国民ではないぞ!
シルバニアは何を考えているっ!」
「……ラグランジュ騎士団長。我が国の影響力喪失を恐れ、
必要以上の軍事力を持たせないようにしたのは、
かつての我々ブランドブレイ騎士団です。」
「ぐっ、馬鹿な真似を……っ!」
「その、シルバニア軍ですが――。
現在、公都にて特設師団を2個急遽編成中とのことですが、
侵攻までに間に合うかは……恐らく無理ではないかと。」
「――我が国から騎士団を派遣するしかない、
ということだな。わかった。
皆の者、聞いての通りだ。」
「…………。」
「この報告を、隣国シルバニア公国からの事実上の救援要請と受け取る。
我がブランドブレイは宗主国として騎士団を防衛に派遣する。
誰か、行ってくれる者はいないか?」
「なんだ、それでもお前たちは誇り高きブランドブレイ騎士団か!
いつから騎士団はそんな保身に走るようになった!
ああ、嘆かわしい! 腰抜けどもめっ!」
「――僕が、行きましょう。」
「!」
「!!」
「サード=ノーベル!」