『僕は、負けない』
「サード=ノーベル! 若いお前が行ってくれるか!」
「はい。」
「……。
若者に何ができる。
出世欲に魅入られて命を落とすなど愚か極まりないぞ。」
「違う!そんなんじゃない!」
「黙れ、ヘルツ!
動かない騎士団などただの役立たずだ!
お前のような腰抜けよりは職務を果たしている!」
「それで、
ノーベル7月副騎士団長。
具体的にどうするつもりだ?」
「はい。
ステラ港の7月騎士団を率いて、
バレンタイン防衛へ向かいます。」
「お前自身はどうする?
指揮官の合流を待っていたのでは
間に合わないぞ。」
「騎士団は先行させます。
僕自身はウニベルシダー経由で山道を越え、
街道途中での合流を図るつもりです。」
「――できそうか?」
「はい。
僕の方は少人数の強行軍で昼夜を問わず突き進めば、
メーヴェルヴァーゲン街道の途中で合流できるかと。」
「だが、それではステラの防衛が成り立たないぞ。
ステラ港はどうするつもりだ?
まさか他国防衛のために放棄するつもりではないだろうな?」
「うっ…………。」
「――ステラ港には、俺が行こう。」
「コペルニクス騎士団長!」
「現在、森林都市ミッテンヴァルトには
4月と2月の騎士団が駐留している。
俺の2月騎士団がステラ港に向かえば両市の防衛が可能だ。」
「よし、ではステラの防衛は2月騎士団に任せる。
と――そうだったな。サード=ノーベル副騎士団長。
お前の父親から、騎士団長譲位願を預かっている。」
「!」
「!!」
「息子が自らの意志で立ち上がったときに、これを受理してくれとな。
……そして時は来た。
サード=ノーベル。汝を父親に代わり7月騎士団長に命ずる。」
「!!!
はっ!有り難き幸せ。
仰せのままに!」
「では、行くがいい! バレンタインを防衛せよ!」
「はい!」