『鐘の音を合図に』
「おい、ボイスっ!」
「……レオンか。どうした、そんなにあわてて?何かあったのか?」
「イーディス=ベークランドが、誘拐された。」
「……何っ!?誰にだっ!?」
「原始魔導協会と名乗る組織に。」
「原始魔導協会?
……魔導の根元追求を目的と謳っている、
あの実力行使派の非公認団体か?」
「ああ。……今入ったばかりの情報だが、
ベークランドは兵舎へ向かっている路上で誘拐されたらしい。
そしてそのまま近くにあった民家に連れ込まれたとの事だ。」
「兵舎へ向かっているところを?
ちょっと待て、あいつは今日非番の日ではなかったか?
……それで、やつらの目的は?」
「まだわからない。
ボイス、
とにかくウェルナー将軍へ報告に……」
「将軍と師団長達は今頃、王城で会議中のはずだ。
…………。
俺は自分の部隊を引き連れてベークランドを救出に行く。」
「ボイスっ!?正気かっ!?
上の命令を待たずして部隊を動かすなど……
下手をすると国家内乱罪になるぞっ!?」
「構わん。
命令を待っている間にベークランドの身に何かがあったどうする?
俺にとっては一刻も早いベークランド救出の方が大事だ。」
「もし、俺がここで作戦会議室に密告に行ったら?」
「その前に俺は部下を率いてベークランドの救出を試みる。それだけだ。」
「……わかったよ、ボイス。
ならば俺も将軍に告げ口に行くようなことはしない。
その代わり……」
「その代わり?」
「俺にも手伝わせろ。」
「!!!」
「な、俺って友達思いだろ?」
「……その一言がなければな。」