Forbidden Palace Library #00 「失われた7枚」シリーズ 外伝

『鐘の音を合図に』



王都シルバニア
住宅街 廃屋前

ボイス 「様子はどうなってる?」

レオン 「依然として奴らは廃屋の中に閉じこもっているみたいだな。
 ……扉は表通りに一つ、そして裏に勝手口が一つ。
 両隣は普通の民家だから扉はない。」

ボイス 「中の状況はわかりそうか?」

レオン 「おそらく、ベークランドが捕らえられている。」

ボイス 「そのぐらい俺でもわかる。
 そんなことを聞いているんじゃない。
 中に何人ぐらい人がいるか分かるかって聞いているんだ。」

レオン 「そうならそうと先に言ってくれ。」

ボイス 「おい、レオン、お前、分かっててわざと言ってないか?」

レオン 「ご名答。……バレたか。」

ボイス 「ほぉ。そうかそうか。覚えてろ、あとで。」

レオン 「……いつもの余裕がないみたいだな、ボイス。
 ま、やっぱり愛しの君が誘拐されたとあったら
 余裕もなくなるか。」

ボイス 「愛しの君?誰がだ?」

レオン 「……イーディス=ベークランドのことだよ。
 好きなんだろ?
 好きだからこそ冷たく接してしまうんだろ?違うか?」

ボイス 「……なぜそうなるのだ?」

レオン 「素直じゃねえなあ。
 自分の気持ちに素直になれよ、ボイス。
 好きだからこそ自分の手で真っ先に助け出そうとしているんだろうが?」

ボイス 「…………。」

レオン 「まあいい。その話は後だ。
 で、中の人数を調べればいいんだな?
 ちょっと待ってろ。気配を探ってみる。」


………………。

レオン 「6人、あるいは7人。10人はいない。気配はそんなところだ。」

ボイス 「……いつものことながら、よくわかるな。大したものだ。」

レオン 「訓練のたまものさ。」

ボイス 「やはり、かつて諜報活動に従事していただけはあるということか。」

レオン 「まあ、な。……それよりどうする、ボイス?
 ここにいる各々数名の部下だけで乗り込むか?
 それとも一度兵舎に戻って兵を増強してくるか?」

ボイス 「後で罪に問われる人間は少ない方がいい。違うか?」

レオン 「違わねぇ。
 だが、武装は?俺達も部下も含めて待機時のままだぞ。
 もっともその間に上司に見つかったらパァだけどよ。」

ボイス 「そんな時間はない。現状装備のままで行く。」

レオン 「…………。
 お前は普段から大剣を携帯しているからいいけどよ、
 俺は投げナイフしか持っていないんだぜ?」

ボイス 「何本持ってる?」

レオン 「8本。」

ボイス 「充分だ。部下に廃屋の周りを包囲させ、俺とお前で乗り込む。
 奴らが総勢10名だったとして、半分は俺が倒す。
 残り5人。3本のおつりが来るはずだ。」

レオン 「……お前さ、やっぱりさっきの事を根に持ってるだろ?」

ボイス 「そうかそうか、8本で十分か。
 いやいや、大した腕前だ。
 すばらしいなぁ。ああすばらしい。」

レオン 「……すまんボイス、俺が悪かった。
 それで、どうやって乗り込む?
 正攻法で行くか?それとも裏から奇襲をかけるのか?」

ボイス 「俺が表から、お前が裏から乗り込む。異存は?」

レオン 「ないね。切り込みの合図は?」

ボイス 「……5分後、正午の鐘が鳴った瞬間だ。」


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