『鐘の音を響かせ』
「ハーシェルさぁん☆」
「ん?なんだ、ベークランド。」
「今日は何の日か覚えてます?」
「今日?3月18日?」
「はい。」
「…………。」
「…………。」
「…………。」
「くすん。1年前の今日、
黒いローブの人達にとらわれた私を
助けてくれたこと、覚えていないんですか?」
「あ、あれは気まぐれだ。」
「あーあ、またそういうひねた事言っちゃって。
イーディスが誘拐されたってわかった時、
真っ先に乗り込もうとしたのは誰だったか――。」
「レ、レオンっ!」
「俺も今日があれからちょうど1年だと思ってな。
お祝いといっちゃなんだけどな、
いいもんもってきたぞ。」
「いいもの、ですか?」
「なんだ、それは?」
「知ってるか?
結婚するには戸籍の写しが必要なんだぞ。
王国から貰うとなるとあの手続きが煩雑でな。」
「け――――結……婚?」
「だ、誰もまだ結婚するとは言ってないぞ!」
「別にいますぐここで挙式あげろってわけじゃないんだ。
諜報部特権で二人分の戸籍取ってきたぞ。
備えあれば、憂いなし。だろ?」
「なっ……。」
「俺、優しいだろ?」
「それを余計なお世話って言うんだ!」
「はいはい。
お世話でも下世話でもいいから感謝しとけ。
ほれ、イーディス。二人分の写しだ。」
「おいっ、レオンっ!」
「いいじゃねぇか、減るもんじゃなし。」
「……ふふ。
確かに、お預かりしましたわ。
えっとハーシェルさんの項目は……。」
「……あら、ハーシェルさん。」
「な、なんだ。」
「今年で32歳になるんですの?」
「…………はぁ?」
「誰が32歳?」
「俺はまだ23だ。」
「でも、ここには561年生まれって。」
「え?」
「…………本当だ。」
「そうかそうか、こいつは傑作だ。
ボイス、お前。
俺達より一回り近く年上だったのか?」
「馬鹿な。そんなことあるわけない。」
「わかってるよ。そりゃそうだ。
どうみてもそんなには見えない。
書き間違いか何かじゃねえのか?」
「でも戸籍って、書き間違えたら大変なことになるのでは?」
「確かに少し気にかかるな。
……もう少し見てみれば、
何かわかるんじゃないか?」
「そうですわね。見てみましょ☆」
「お前ら、人のだと思って勝手に……。」