『鐘の音を響かせ』
「戸籍って、なんかたくさん記載項目があるのね。
経歴みたいなものも色々と書いてありますわ。
……7歳の頃までおねしょしていたとか。」
「待て、そんなことは書いていないだろう。」
「もちろんです。でも動揺したってことは心当たりあるんですね。」
「そ、そんなことはどうでもいいだろっ!」
「……くすっ。」
「なにがおかしい?」
「いえ、そういう所も可愛い人だなぁと思いまして。」
「かっ、かわい――――い!?」
「あー、お二人さん。まだ俺がいること忘れてないか?」
「レ、レオンっ!」
「……やっぱり自分たちの世界に入ってやがったな。
気づかないでラブコメやってるのはともかく、
結局なんだかんだで見てるんじゃねぇか。」
「い、いや、それは……!」
「まあ俺にも見せて見ろよ。
どれどれ……えっと、
ボイス、7歳までおねしょ。」
「だからそんなこと書いてねぇだろっ!!」
「ムキになるなよ、ボイス。
それで、えーと――シルバニア王立第一初等学校へ入学するも、
半年後にブランドブレイへ移住。」
「……え?」
「あら、ハーシェルさんブランドブレイにいらしたの?」
「いや、そんなことは……。」
「戸籍がそこで途切れてるな。
あとはブランドブレイに行かないと――ん?
数行空白が続いた後に、また何か書いてあるぞ。」
「え?」
「待てよ、なんか変だと思ったら、
それから9年後にまた王立第一初等学校へ
入学したことになってるぞ。」
「!?」
「ハーシェルさん、どうして二回も初等学校行ってるんです?」
「そうか、わかった。そんなに頭悪かったのか?」
「ちっ、違う!俺は二度も初等学校に通ってなどいない!」
「わかってるって、冗談の通じない奴だな。
ムキになるなよ。
――それで現在、第一師団所属。」
「そこだけはあってるみたいですね。」
「俺はブランドブレイになんか行っていないし、
俺は義務教育の初等学校8年間全てをシルバニアで受けた。
そのあとすぐに王立軍へ入隊したはずだ。」
「そういやそうだよな、そこで俺と出会ったんだもんな。」
「戸籍と現実が異なっているっていうの?」
「……どういうことだ?」
「……なんか話が妙だな。
わかった、ちょっと待っててくれ。
余計なお世話ついでに、諜報部行って調べて来る。」
「ああ。頼む、レオン。」
(なんだ……?この胸騒ぎは。
俺の戸籍は、なんでこんなことになってるんだ?)