『鐘の音を響かせ』
「どうだ、何か手がかりは見つかったか?」
「いえ、まだそれらしきものは……。ハーシェルさんは?」
「こっちもさっぱりだ。」
「それにしても、戸籍謄本って量が膨大なんですね。
何百年前の祖先のことまで、全部記録が残っているなんて
初めて知りました。」
「ボイス!」
「レオン。」
「そちらはなにかわかりました?」
「ああ。諜報部経由でお前の経歴調べてきたぞ。」
「……身内に調べられるのはあまりいい気分じゃないな。」
「まあ仕方ないさ。もっとその前の手掛かりもでてきたぞ。
どうやらお前、7歳でシュレディンガー家に
養子として弟子入りしている事になってるな。」
「シュレディンガー家?」
「なんだ、知らないのか。
ブランドブレイ王国の名門、
ラファエル時代から伝わる剣術の大家だ。」
「!……シュレディンガー流剣術のことか?」
「ああ。お前も同じ流派なんだろ?」
「そうだ。」
「もっとも――戸籍上はその総本山で修行したことになってるけどな。」
「どうしてそんなことに……?」
「そこまでは分からない。
ただその6年後、13歳にして師範代の地位にまで
上り詰めている。」
「ハーシェルさん、そんな天賦の才があったんですの?」
「い、いや、そんなはずは……。」
「更に、だ。
お前が師範代の地位についたことになっているその同じ年、
もっと奇妙な事が起きているぞ。」
「え?」
「師範代につくや否や、そこの当主が自分の邸宅で変死している。
その件で養子縁組は取り消され、一旦シルバニアへ
戻ってきたと記録されている――が。」
「その先は?」
「わからん。
それ以上の記録は途絶えてる。
恐らく、そのときに何かが起こったのだろう。」
「何かが……。」
「!」
「どうした、イーディス?」
「ねぇ、これみて。」
「どれだ?」
「ん?なんだこれ?容疑者引き渡し依頼書?」
「…………。」
「…………ボイス。」
「なんだ?」
「非常に言いにくいが、あっさり言おう。
お前に対して、エルメキアから指名手配が出ている。
賞金は4万リル、生死不問。」
「俺がっ!?エルメキアから!?」